本書は、日常生活の最も本質的・根源的営みである「食事」に関連する「マザーグースの唄」(イギリスの伝承童謡)を扱っています。「マザーグースの唄」の多くは、人々が日々の「食べ物」にも事欠き、腹いっぱいに食べることが困難だった時代に、おそらくあまり裕福とは言えない庶民によって創作・伝承されてきました。いつの時代も「食べ物」は富める者と貧しい者との間の格差を端的に示しています。「仲間」や「友だち」や「伴侶」を意味する「コンパニオン」("companion")という英語の語源が「一緒にパンを食べる間柄の人」を表すように、「食べる」ことは、そのような貧しい庶民が他者との関係を円滑に繋ぐための大切な社会的行為でもありました。「食べ物」や「飲み物」が登場する唄の考察を通して、本書はかつてのイギリスの人々の日常生活や文化の一端を垣間見ようとするものです。「マザーグースの唄」の面白い世界を視覚的にも伝えられるように、各唄には、イギリス旅行中のスケッチも含めて、多くのイラストや写真や刺繍を添えています。
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