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桜田門外の変から4年ー守旧派に藩政の実権を握られた水戸尊攘派は農民ら千余名を組織し、筑波山に「天狗勢」を挙兵する。しかし幕府軍の追討を受け、行き場を失った彼らは敬慕する徳川慶喜を頼って京都に上ることを決意。攘夷断行を掲げ、信濃、美濃を粛然と進む天狗勢だが、慶喜に見放された彼らは越前に至って非情な最期を迎える。水戸学に発した尊皇攘夷思想の末路を活写した雄編。
桜田門外の変から4年ー守旧派に藩政の実権を握られた水戸尊攘派は農民ら千余名を組織し、筑波山に「天狗勢」を挙兵する。しかし幕府軍の追討を受け、行き場を失った彼らは敬慕する徳川慶喜を頼って京都に上ることを決意。攘夷断行を掲げ、信濃、美濃を粛然と進む天狗勢だが、慶喜に見放された彼らは越前に至って非情な最期を迎える。水戸学に発した尊皇攘夷思想の末路を活写した雄編。
レビュー(21件)
吉村昭さんは史実を淡々と綴るので小説としての面白みは少ないですが、歴史の重みを感じさせてくれる内容になっていると思います。 水戸天狗党をお知りになりたい方にはオススメです。
幕末に最も過激な行動を起こしたのは長州でも薩摩でもなく、水戸の尊攘派である。井伊直弼の首を獲った桜田門外の変はもちろんのこと、本作で描かれる天狗党の挙兵はその最たる出来事と言える。幕府に攘夷決行を迫るため、彼らは京都にいる水戸出身の徳川慶喜に志を訴えに行くが、その慶喜に追討され、揚句には見放され、総勢352人の斬首という最悪の結末を迎えることになる。果たして彼らは無駄死にだったのか。しかし、この幕府の前代未聞の残虐行為が薩摩をはじめ国内諸氏の討幕意識を一気に高めたことは間違いない。個人的には、水戸藩内の尊攘派と門閥派の抗争にも大いに興味を持った。吉村昭氏の作品はいつものことながら、小説というよりは時事記であり、残念ながら面白い読み物ではない。
「桜田門外の変」を購入予定の方は先にそちらを読んだ方が良いと思われます。 教科書では数行しか書かれていない「天狗党」についての本(題名通り)ですが、とても詳細に書かれていて勉強になります。水戸は御三家の一つであるのに、どうしてこんなに幕府の足を引っ張るのかと、若干イラッとしました。 彼らは自分達が正しいと思ってまっすぐ生きてきたのかもしれませんが、行軍するたびに無言の圧力(後半は。前半は人殺しや放火なんかして無理やりお金を奪うという最悪な団体)で穏やかに人々から金を分捕っていたことは許されるべきことではありません。結局迷惑をかけながら滅びへの行軍を続け、最終的に弾圧されて気の毒だとは思いますが、尊敬は出来ません。「天狗党」に歯向かわないようにしようという事なかれ主義のそれぞれの藩の態度は、その後の戊辰戦争に通じるものがあると思いました。薩摩藩はこの頃から裏工作を色々な所でしていたのですね。やはり嫌いです。そして、やっぱり信じていた家臣を裏切った慶喜も嫌いです。
よく知らなかった天狗党
天狗党についてよく知りませんでした。本作を読んで「分かった」なんてことは言えませんが、ある種のイメージを持つことはできました。
天狗党については日本史の教科書で目にした程度でしたが、読み終わってかなり勉強になった作品でした。 水戸藩内での抗争の部分ではそれほどだったものの、行軍が京都へ向け西へ西へと進んでゆくにつれ、興奮が高まってきました。まさに自分が参加しているような臨場感があります。