本書の目的は、財務指標に示されない企業価値を解明するとともに、その価値を実現する企業の戦略を分析することである。2006年に国連がPRI(責任投資原則)を提唱したことから、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)が投資の課題とされ、その頭文字からESGと呼ばれるようになった。ESG投資に対応する企業活動は、財務指標とは異なる成果をもたらす可能性があり、その成果とはどのようなものか明らかにする。ESG投資により、企業はガバナンスの強化が求められ、株主からのESG投資に対応する企業は、非財務情報をどのように開示するかが課題となる。企業の社会的責任において、戦略的な意義は大きく変化した。企業は、経済価値だけを創出する組織ではない。本来の企業目的として、中長期的な理念やビジョンの実現がある。中長期的な企業活動に関して、財務成果だけが指標ではない。環境課題や社会課題の解決によって企業価値を高めることも企業の戦略となる。本書は、企業の理念やビジョンを実現するための企業活動として、非財務情報の活用に着目した。企業の社会活動とは、新たなビジネスであり、数十年先の市場から逆算するバックキャスティング経営となり、地域主体を取り巻く多くの主体の間で必要とされる。企業は、ESG投資に対する成果をどう導くかが課題となる。その成果に関するCSR活動において、どのような要素と活動過程が有効であるかを検討して、企業行動への提言も考察した。本書が探求することは、主として次の三点である。第一に、企業の社会的責任の観点から、非財務情報がもたらす企業の価値が重要とされるため、それを分析した。第二に、企業活動は環境課題の解決、社会課題の解決、人材の育成が重要であるためそれらの観点から、企業事例を分析した。第三に、ESG投資に対応した企業活動の成果をはかる指標は確立していないため、本書では、株価を用いて分析した。企業は市場の創出などの活動により、財務指標として経済効果を、非財務情報として環境や社会への影響を高めていることを明らかにした。企業の社会活動は、社会貢献にとどまるものではない。ESG投資に対応する企業活動は、環境、社会、企業を持続可能にする効果をもたらす。そうした効果を発現するために、ESG経営やESG評価を考えていくことが今後の研究課題としても重要である。
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