ニュートン力学のあとを受けた18〜19世紀は、熱をめぐる世紀となった。なぜ熱だったのか?本書は、科学者・技術者の実験や論理を丹念に原典から読みとり、思考の核心をえぐり、現代からは見えにくくなった当時の共通認識にまで肉薄する壮大な熱学思想史。迫力ある科学ドキュメントでもある。後世が断ずる「愚かな誤り」が実はいかに精緻であったかがじっくりと語られる。新版ともいえる全面改稿の全3巻。第1巻は、熱の正体をさぐった熱力学前史。化学者ラヴォアジェが熱素説の下で化学の体系化をなしとげ、より解析的に熱を取り扱う道が拓かれるまで。
レビュー(11件)
年末年始の読書
熱学に関する本、あまたある中、山本義隆氏(ウイキペディア参照)に興味を持ったこともあり本書を購入しました。 温度とは何だろう、熱とは、温度と熱との違いは?普段あまり気にもせず深く考えることもなく気づかずに済んでしまっています。先ずこの本ではそれまで温度と熱と未分化だったのを16世紀商業・技術進歩の時代を背景としてガリレオが温度計を発明し、温度を客観化・定量化し測定可能とすることで、主観的人間の皮膚感覚から分離し、客観的な測定装置を用いて正確な数値を定めることによって近代科学としての熱学が始まっていきます。 ガリレオは、物質を幾何学的に均質化する「素朴な機械論的自然観」によって1000年続いてきたアリストテレスの「質の自然学」からの脱却をはかりました。それは物質的物体の特殊性を捨象して普遍的性質のみを対象とする古典力学においては非常に有効でしたが、火の粒子を論ずるときに見られる物質の特殊性を対象とする化学においては無力でした。 そこでこれを克服すべく登場したのがボイルでした。ベーコンの経験主義と功利主義の精神をもとに化学において運動を第一義的なものとする構成粒子の機械論的属性を持ち込み運動学的粒子論を唱えました。 しかし、ニュートンによる力概念の導入(粒子間力・斥力)によって、ボイル・フックに見られた熱運動論への芽は摘み取られ、その斥力の担い手として熱物質、さらに多元的物質論を生み出し、熱物質論(熱素説)へと繋がっていきます。 そして、ニュートン<エーテル>、ヘールズ<空気>、ブールハーヴェ<火>、フランクリン<電気流体>と発展してきた物在論は、ラヴォアジェ<熱素>によってひとつの完結を迎え、やがてラプラス学派により解析的な熱素理論まで高められ数理科学の水準まで押し上げられていきます。
在野では勿体ない
学生運動方面で名の通った方のようですが、有名大学教授と同等かそれ以上のアカデミックな記述をされています。東大生当時から秀才といわれた方ですので当然の出来なのかもしれませんが在野でいるには勿体ないと思いました。