韻律なくして真実なし ウェルギリウス『アエネーイス』
ラテン語を学んでいる一人として、同じように今後ラテン語にふれ、ウェルギリウスの作品に興味を持つであろう多くの方々へ、このようなアプローチをすると作品の味わいがより豊かになるのではと呼びかけたい、その様な思いから本書を著わしました。さて、詩人のメッセージに触れるためには、原文が耳で聴きとる建前を持つ叙事詩、ラテン語ヘクサメテル(長・短短六歩格)である以上、語意と文法だけではなく、その韻律にも注意を払うことは自然なことではないだろうか。これまでの伴奏効果としての韻律と内容の相互作用の理解から一歩踏み込んで、ヘクサメテルの2つのメトロンの配列類型をヘクサメテルにおける「韻律形式」としたときに、同一・真逆・キアスムス等の韻律形式で連関する詩行間に、内容面でもそのような連関があることを見出した。詩行同士の韻律形式の連関がそれらのより豊かな内容を示唆する。一方、このような詩的技巧のみならず、作品の精神的価値についても21世紀にとって大きな意味があると思われた。すなわち人間の自治による世界の恒久平和と強欲の克服、そのことがホメーロス・ルクレーティウスのヘクサメテルをそれぞれ「正」・「反」とし、ウェルギリウスのそれを「合」とする弁証法的展開の中で歌われていると理解されたのである。このことは「はじめに」の中でウェルギリウス『アエネーイス』の全体像として縷々述べている。最後に、この詩的技巧および精神的価値の理解に基づき、第1巻の序歌(全巻の序歌でもある)を訳し訳注を添えた。
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