コロナ禍に見舞われた世界。だが、アジアが世界経済を牽引するトレンドは変わりはありません。2050年には世界の国内総生産(GDP)の約5割を占めるとようされています。ファンド資本主義の繁栄、共産党キャピタリズム、日本の先を行く様々な改革ーー。成長への期待で多くの企業と投資家を引きつけるこの地域は、さまざまな価値観が交錯する混沌の場でもあります。欧米の経済常識を飲み込み消化するアジアの多様性から、新しい資本主義のかたちが浮かび上がります。それこそがアジア資本主義です。
本書で考える「アジア資本主義」を構成する要素は次の4つです。
1 受容性(市場原理を受け入れる) アジア各国は成長を続けるとともに、経済の質を高め近代化や国際化を進めるという命題を負うアジアは、先進国では輝きを失いつつあるとはいえ、まだアングロサクソン型資本主義は活用できるとしている
2 折衷性(伝統・文化と折り合いをつける) 市場原理に染まりきるのではなく、各国の伝統的な価値観や企業文化との衝突を通じて折衷的な混合型資本主義を模索するのがアジア流。アジアの企業や政府が市場原理を利用して近代化を進める様子を描く
3 競争性(個性を主張する) アジアの多様な文化や伝統が市場原理によって洗練され、お互いに競い合うようになる。競争が発する熱がアジアの成長を持続させる
4 拡張性(多様性が広がる) モザイクの形容がぴったりくるアジア諸国はやがて欧州とのつながりを深め、米国型資本主義への巨大な対抗空間を形成する
「拡張性」「折衷性」「競争性」「拡張性」--。これらの要素を総合した「アジア資本主義」とは何かの解を明らかにします。
筆者はアジアの価値観や経済の仕組みが、世界均一の尺度という意味でのグローバルスタンダードになるとは考えていません。20世紀が米国の世紀であったのと同じように21世紀がアジアの世紀になる可能性は大きくないでしょう。ソ連崩壊によって世界で唯一の超大国となった米国の覇権が、簡単に消えていくとも思えません。資本主義のかたちも同じで、アングロサクソン型の市場原理主義も消えることはありません。しかし対抗軸は必ずあらわれる。それが「アジア」なのです。
序 章 アジア発、新たな資本主義のかたち
第1章 アジアを動かすファンド資本主義
第2章 共産党キャピタリズムーーマネーは中国を目指す
第3章 市場型ガバナンスの実験室
第4章 ソーシャル・キャピタリズムの芽生えーーESGマネーの奔流
第5章 モザイク・パワーーー台頭するフロンティア市場
第6章 ユーラシア経済圏を取り込むーー欧州の思惑
終 章 レッセフェールを制御する
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