室生犀星と古井由吉の金沢、村上春樹と坪内逍遙の早稲田、そしてフィッツジェラルドとサリンジャーのニューヨーク。本書は、人気翻訳家の都甲幸治が、自らと関わりのある街を中心に、小説を舞台ごとに読みくらべて、「街」と「小説」の関係を探る1冊だ。同じ場所でも、作家によって見え方、書き方は異なり、読み比べることで街はどんどん立体的になり、新たな奥行きが生まれてくる。街歩きと書評が融合したエッセイ集。
まえがき
1 金沢
プロローグーー真っ黒いルーの謎のカレー
室生犀星『幼年時代』--杏の温かい音
古井由吉「雪の下の蟹」--男たちの体の群れ
吉田健一「金沢」--金沢にはチョコパフェがない
2 ロサンゼルス
プロローグーーアメリカの自動車教習
ジェームズ・M・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』--カリフォルニアの緑の寿司
レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』--迷路としての都市
チャールズ・ブコウスキー『パルプ』--生を慈しむ
3 吉祥寺
プロローグーーロンロンよ永遠なれ
太宰治「ヴィヨンの妻」--公園とアルコール
井伏鱒二『荻窪風土記』--百年前からサブカルチャー
松家仁之『優雅なのかどうか、わからない』--心がやわらかくなれる場所
4 福岡
プロローグーー祖父の思い出
絲山秋子『逃亡くそたわけ』--故郷としての言葉
東山彰良『女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。』--太宰府の大きな楠
遠藤周作『海と毒薬』--メロン畑の思い出
5 国立
プロローグーー桜並木のヴォルテール
多和田葉子『犬婿入り』--谷保天神のニワトリ
大岡昇平『武蔵野夫人』--ウグイスとメジロ
黒井千次「たまらん坂」--坂とロック
6 本郷
プロローグーー本郷とは相性が悪い
夏目漱石『三四郎』--漱石は僕のクラスメート
森鴎外『青年』--鴎外と性の揺らぎ
大江健三郎「死者の奢り」--死者たちの声を聞く
7 早稲田
プロローグーー長いスロープ
坪内逍遙『当世書生気質』--日本超近代文学の起源
村上春樹『ノルウェイの森』--身体の哲学
保坂和志「この人の閾」--厚みのある時間
8 ニューヨーク
プロローグーー鍵だらけのドア
フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』--キラキラした世界
シンガー「ギンプルのてんねん」、マラマッド「白痴が先」--ニューヨークに生きる東欧
J・D・サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』--ナイフとフォーク
あとがき
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