韓国の民俗病「産後風(サヌプン)」をめぐる人びとの語りから、その病いが1980年以前、女性たちが置かれた劣等な地位、経済的貧困と過度な労動による心理的、肉体的苦痛という社会・文化的背景から構築され、いまなお〈風〉は、弱者として生きてきた韓国女性全体に「苦しみのイディオム」として共有され続けていることを、人類学的に論究する。
はじめにーー「声なき声」をすくい上げる
序 章 病いからみる社会
1. 民俗病の研究と歴史
2. 産後の病い
3. 本書の構成
第1章 韓国の医療環境と出産
1. 韓国の医療体系
2. 韓方医学の社会的位置づけ
3. 出産の慣習と文化ーー産室から病院の分娩室へ
4. 出産の医療化と背景
第2章 「産後風」という病い
1. 産後をめぐる観念
2. 産後風の歴史的由来と定義
3. 産後風の症状
4. 治療と健康管理行為
第3章 患う女性ーー病いの語りとジェンダー
1. 「女性のオーラル・ヒストリー」と「病いの語り」の間*
2. 産後風の語りにみられる韓国女性の生活
3. 「ないはずがない身体」の意味づけ
第4章 治療する側ーー韓方医学における疾病の社会的構築
1. 韓方医学における産後風の持続、変化、拡大
2. 韓方医による病理化
3. メディアによる知識の流通
第5章 ケアする人ーー産後調理院と産後調理士の登場と発達
1. ケアされなかったお母さんたち
2. 産後ヘルパーから健康管理士へ
3. 「産後調理院」のケアと儀礼の変容
4. 強化されていく産後ケア
終 章 消えゆく病名ーー「産後風」とはなにか
1. 文化的表象としての「苦しみのイディオム」
2. 産後風からみる女性の望み
3. 西洋医学のパラダイムにおける民俗的な病い
4. 産後風の治療に関わる課題
おわりに
初出一覧
参考文献
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