私たちは「万葉集」についてどういうイメージをもつだろうか。大多数の人にとってそれは、「天皇から庶民まで」が「質朴な感動を雄渾な調べで真率に表現した」、日本民族が誇る国民歌集というものではなかろうか。著者は、万葉集についてのこの強固なステレオタイプのイメージはいかにして出来上がったかを問い、 古典が明治近代の国民国家の文化装置として成立したことを、文学史を博捜して緻密な論理で跡づける。
◆目次
はじめに
第一章 天皇から庶民までーー『万葉集』の国民歌集化をめぐる問題系
一 国民歌集の構造
二 子規の再発見という通念
三 金属活字版『万葉集』の出現
四 一八九〇年という画期
五 国民の全一性の表象
第二章 千年と百年ーー和歌の詩歌化と国民化
一 国民歌集の前史
二 『新体詩抄』と和歌改良論
三 国文学と国民文学
四 子規のスタンス
五 国民歌集と国民教育
第三章 民族の原郷ーー国民歌集の刷新と普及
一 民謡の発明
二 万葉びとの創成
三 異端者伊藤左千夫
四 教育者の聖典ーー島木赤彦の万葉尊重1
五 伝統の発達ーー島木赤彦の万葉尊重2
おわりに/注/人名索引
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