江戸川乱歩「君、こんど『犬神家の一族』というのを書くだろう。ぼく犬神だの蛇神だの大嫌いだ」
横溝正史「復活以後の江戸川乱歩こそ悲劇のほかの何者でもない」
日本の探偵小説を牽引した二大巨頭、江戸川乱歩と横溝正史。
盟友として、ライバルとして、お互い認め合い、時に対立しつつ、
一方が作家として執筆するとき、他方は編集者として支えた。
太陽と月にも喩えられる日本文学史上稀な関係は、どのように生まれ育まれたのか。
二人の大作家の歩みを辿りながら、日本のミステリ史のみならず、
日本の出版史をも描き出す、空前の対比評伝!
「江戸川乱歩と横溝正史ーー二人を太陽と月に喩えることができるかもしれない。
乱歩が旺盛に書いている間、横溝は書かない。横溝が旺盛に書いていると、乱歩は沈黙する。
天に太陽と月の両方が見える時間が短いのと同様に、
二人がともに旺盛に探偵小説を書いている時期は、ごくごく短いのだ」〈本文より〉
「おそらくは、親友でもありライバルでもあった。
だが、何よりも面白い探偵小説を求める同志だった。
二人がなぜ探偵小説を書いていたのかと言えば、
面白い作品がないので自分で書いていたに過ぎない。
乱歩は誰よりも横溝に読んでほしかったし、
横溝もまた乱歩に読んでもらおうと書いていた」〈「青春と読書」2017年11月号より〉
●目次
第一章 登場ーー「新青年」~一九二四年
第二章 飛躍ーー『心理試験』『広告人形』 一九二五年~二六年
第三章 盟友ーー『江戸川乱歩全集』 一九二六~三一年
第四章 危機 『怪人二十面相』『真珠郎』 一九三二~四五年
幕間 一九四〇年~四五年
第五章 再起ーー『黄金虫』『ロック』『宝石』 一九四五~四六年
第六章 奇跡ーー『本陣殺人事件』 一九四六~四八年
第七章 復活ーー『青銅の魔人』 一九四八~五四年
第八章 新星ーー『悪熊の手毬唄』 一九五四~五九年
第九章 落陽ーー乱歩死す 一九五九~六五年
第十章 不滅ーー横溝ブーム 一九六五年~八二年
【著者略歴】
中川 右介(ナカガワ ユウスケ)
作家、編集者。1960年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務の後、アルファベータを設立し、代表取締役編集長として雑誌『クラシック・ジャーナル』、音楽家や文学者の評伝や写真集の編集・出版を手掛ける(2014年まで)。その一方で作家としても活躍。クラシック音楽への造詣の深さはもとより、歌舞伎、映画、歌謡曲、漫画などにも精通。膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、歴史に新しい光を当てる執筆スタイルで人気を博している。主な著書に『カラヤンとフルトヴェングラー』『歌舞伎 家と血と藝』『角川映画1976-1986』など。
レビュー(7件)
陽と陰
江戸川乱歩について知りたいと、いわば資料のつもりで購入。乱歩は名古屋で青春時代を過ごし、博文館に居た頃、神戸の薬剤師、横溝正史を上京させる。乱歩の存在無くして横溝は誕生しなかったといっても過言ではあるまい。また、小酒井不木に学んだ点も大きい。それでも「陽の乱歩 陰の横溝」とは良く言ったものだ。対照的な二人の関わりが興味深い名著。