子供は小さな大人ではないといわれます。どこが大人と違うのか?どこは大人と同じなのか?その違いを明らかにした書籍、文献が見当たりません。大人と違う部分は子供独自の指導をしなければいけないし、大人と同じ部分は大人と同じ指導をすればよいと考えます。体の違いはひと目、見ればわかります。パワーの違いもわかります。サッカーが上手になるという時、一番大きく変化しているのは脳の中です。そして一番、わからないのが脳の中、特に脳の成長過程です。そこで幼年期から青年期までの脳の発達過程を調べました。そしてその発達過程にふさわしい、サッカー指導方法を考えます。人間の脳は爬虫類の時代から古い哺乳類の時代へ、そして現在の新しい哺乳類の時代へと有益だとわかった祖先のよいところは受けついで残し、生存競争に打ち勝つべく、新しく進化をとげてきました。人間の胎児は母親の胎内で魚から両生類、けもの、人間へと成長してきます。爬虫類脳が一番早く、成長し、古哺乳類脳、新哺乳類脳、新々哺乳類脳(前頭前連合野、頭頂側頭連合野)の順で成長します。機能で考えると、生存(生きている)を保証する機能は生まれた時に完成している必要があります。従って、この機能は一番古い「爬虫類脳」にあります。小脳の「虫部」もここに含まれます。次に、健康でたくましく生きていくためには、見たり、聴いたり、食べたり、歩いたりすることが必要です。そして家庭を作り、集団を作る、本能行動も大切です。このために、古哺乳類脳や新哺乳類脳の運動系や感覚系がつぎに発達します。小脳の「中間部、外側部」もここに含まれます。そして最後に、人間として、よりよく生きていくために、創造性を高める「新々哺乳類脳」の部分を発達させます。一見、「脳」と「サッカー」とはあまり関係がないように見えますが「体の動き」を制御している部分は「脳」にあります。従って、脳を知ることが「運動」すなわち、「サッカー」を知ることに大いに関係があるのです。脳の勉強の過程でひとつの事象に気付きました。それは脳科学が大脳の研究に偏っているのではないか?それは「意識」がある状態に偏っているためではないか?スポーツなど運動は「広い意味の脳幹」と「小脳」の部分に大きな機能があり、この部分の働きは「意識」に上ってこないため軽視されがちなのではないかということです。人間の脳は「複雑系」で構成されていて、生きていて、変化しています。切り刻んで調べることができません。人体を制御系として考えると筋肉・骨格系が制御対象になり、頭脳が制御元になります。サッカー指導書は無数にありますがそのような考え方で著述された本は見当たりません。人間を肉体から見た本(筋肉・骨格系)の本はあり、脳科学の本も多数ありますが、両者を統合した本が見当たりません。私たちサッカー指導者にとって必要なのはその統合した知識です。制御元がどのように指示を発し、制御対象がそれを受け、どのように動き、さらにどのようにフィードバックしているかです。私たち少年サッカー指導者はさらに子どもの発達段階で、それらがどのように、どの順で発達成長しているかを知ることです。サッカー(運動)の技、技術に関しては「小脳」が大きな役割をしています。そして人間の行動はほとんど(99.99%)無意識のうちに行われています。人間の無意識の運動・動作は大部分が小脳の働きによります。運動の「速さ」を求める場合は「小脳」で動作させる必要があり、またとっさの判断をするのに小脳の思考モデルを使うとよいことがわかりました。「感性」とは脳幹・小脳による行動および思考のもとになっているもので、無意識の行動および潜在的思考として表れてくるものです。大脳新皮質は考えて行動する「中枢指令室」であり、ここが機能しない限りサッカーは成り立たちません。しかし、この「中枢司令室」にはあまりにいろいろな情報が入り、意識で捉えるため、時には運動・動作を阻害(抑制)することもあり、判断も速くありません。今までは、サッカーも脳も要素還元論的に考えるのが一般的でしたが、人間の脳は複雑系を形成していますので、サッカーにも複雑系の考えを取り入れて著述しました。
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