本書は、2006年8月メディカ出版刊『「改革」のための医療経済学』を底本として使用し、序文と略歴のみ改訂を加えた。初版同様、故青木昌彦スタンフォード大学名誉教授(経済学)の推薦文も含めた。初版発刊後、2006年の日本経済新聞のエコノミストが選ぶ「経済・経営書ベスト20冊」に選出された。また、(東京大学よりも国際ランキングが高い)中国の清華大学が、世界の優れた経済書を選ぶ「Center for Industrial Development and Environmental Governance (CIDEG)」シリーズの一冊として2008年に中国語版も発刊された。
本書は、著者が米国で学んだ最先端の医療経済学の紹介である。初版の出版(2006年)後、14年以上経過しても全く陳腐化していない、古典ともいえる医療経済学の知見をまとめている。多忙な読者を想定して、本書には様々な工夫がある。30分かけて本書の1章「忙しい読者のための総括」だけを読めば、本書の主要な論点を全て網羅することが可能。更に時間のない読者は、15分かけて1章の「下線部」だけを読めば、本書の主要な論点・キーワードを全て俯瞰することが可能である。
本書のハイライトは、4章「医療費高騰の犯人探し」。日本を含む全ての国で、医療政策上の最優先課題は医療費抑制である。医療費抑制のため実施された過去の政策が、なぜ全て失敗したかを、理論と実証研究を用いて説明している。5章「改革へのロードマップ」は、日本の医療政策の形成過程を改善するための政策提言である。残念ながら、2021年現在、これらの提言は殆ど日本では実現されていない。その結果、この点に於いて、日本は他の先進諸国はもちろん東南アジアのタイに比べて、10年以上もの遅れをとっている。今からでも本書の政策提言を実現できれば,日本はこの分野において他の先進諸国に追いつくことが可能だと筆者は考えている。
本書の初版執筆までに筆者は、米国のみならず世界の医療経済学をリードするハーバード大学(修士号取得)、ジョンズホプキンス大学(博士号取得)で学んだ後、スタンフォード大学、米国連邦政府・疾病管理予防センター(CDC)、ロチェスター大学で研究と教育に従事した。初版の出版後、カリフォルニア大学デービス校を経て、2020年に日本へ25年ぶりに帰国。
レビュー(0件)