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標題作「天災と国防」ほか、自らの関東大震災経験を綴った「震災日記より」、デマに対する考察「流言蜚語」など、地震・津波・火災・噴火などについての論考やエッセイ全十二編を収録。平時における備えと災害教育の必要性など、物理学者にして名随筆家ならではの議論はいまだに有効である。天災について再考するための必読書。(解説・畑村洋太郎) 天災の被害を大きくするのは人災である 悪い年回りはむしろいつかは回って来るのが自然の鉄則であると覚悟を定めて、良い年回りの間に充分の用意をしておかなければならないということは、実に明白すぎるほど明白なことであるが、またこれほど万人がきれいに忘れがちなこともまれである。 「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」 「現代では日本全体が一つの高等な有機体である。各種の動力を運ぶ電線やパイプやが縦横に交差し、いろいろな交通網がすきまもなく張り渡されているありさまは高等動物の神経や血管と同様である。その神経や血管の一か所に故障が起こればその影響はたちまち全体に波及するであろう」--<本文より抜粋> ※本書は『寺田寅彦全集』『寺田寅彦随筆集』(岩波書店)を底本に、物理学者で随筆家でもある寺田寅彦の発表したもののなかから災害に関連するものを集め、再構成したものです。 天災と国防 火事教育 災難雑考 地震雑感 静岡地震被害見学記 小爆発二件 震災日記より 函館の大火について 流言蜚話 神話と地球物理学 津浪と人間 厄年とetc.
レビュー(23件)
この国は災害とは不可分の歴史を持つということがしみじみ伝わってくる。
鎮魂の夏、8月に読む
寺田寅彦という科学者の先見の明に驚くばかりである。科学の進歩が決して自然の脅威を防ぐことにはならないことを戒めている。 こうしたことを実証的に、しかも素晴らしい文章で綴っていく。 3・11以降色々と感じさせられることが多い中で、寺田寅彦の書いたものを読むことによって、自然を恐れ、人間としての思い上がりを戒めて生きることの大切さを学んだ。