九鬼周造の哲学を近代の人間学と読み解き、その軌跡を破綻と再建という視点から論じる。
近代日本の発展と歩調を合わせて成長した九鬼は人生の躓きによって近代人の抱える孤独に直面し、そこから脱出する方法を探求するようになる。偶然存在する孤独な実存が想像力によって共同体に開かれて他者と出会い、人間となる。しかし人間となった実存はしばしば自身の偶然性を忘れ、自分たちこそが最も優れた人間であると思い上がる。そして他者を見下して自分の思想に従わせようとするようになる。
こうした彼の哲学の歩みは大日本帝国がアジアの盟主としての野望をもって太平洋戦争に突入し、崩壊するまでの軌跡と重なりあう。
近代日本の申し子、九鬼周造の哲学の再解釈。
はじめに 近代に人間であること
第一部 九鬼周造の人間学:破綻と再建
序論 九鬼周造小伝
第一章 トリロギーとデュアリズムー 九鬼周造の人間学の破綻
第二章 「現実」を求めて:『偶然性の問題』の論理学
第三章 世界を創る:『偶然性の問題』の行為論
第四章 永遠回帰する宇宙:詩の美と実存
第五章 トリロギーとナショナリズム:九鬼周造の人間学の再建
第一部 結論 現代の人間科学へ
第二部 存在と非存在を寿ぐ
第六章 平⾏線と脱⾛:九鬼周造と中井正一の隔たりについての思想
第七章 なぜ「絶対無は絶対有にほかならぬ」のか:九鬼周造と田辺元
第八章 本当の愛に背を向けても:哲学者・九鬼周造の誕生
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