本書は、現代ドイツにおける「リスク・マネジメント会計制度」の在り方とその意味につき、解明することを試みるものである。ここにおいて問題とされるのは、企業内部の管理の仕組みたるリスク・マネジメント・システムにおける、会計情報の利用の場面ではない。むしろ、企業内部の管理たるリスク・マネジメントに関わる情報が、会計制度の枠内に立ち現れる場面が問題とされるのである。
このような観点は、ドイツにおいて、リスク・マネジメントに関わる情報が、企業の会計報告の一環として制度的に公表されているという事実に基づき、獲得されたものである。このようなリスク・マネジメントに関わる情報の制度的公表が行われるのは、それによって、一定の社会的機能が発揮されるためであると考えられる。こうした思考から、リスク・マネジメントに関わる情報が社会的に公表されることの意味が問題となる。すなわち、ドイツという一国の社会制度の枠内にリスク・マネジメントを位置づけ、その制度がどのような構造を有し、それによってどのような機能を発揮することが意図されているのか、ということが問題となるのである。
また、本書における上記の問題は、たしかにリスク・マネジメントという具体的な一つの対象に関わるものではある。しかし同時に、この問題に取り組むことを契機として、リスク・マネジメントのような企業内部の経営管理に関わる事象と会計との関係性をとらえるに当たり、一つの新たな方向性を有する視点が獲得できるものと考えている。
そのような問題に取り組むために、本書は四つの部から構成されている。まず第1部では、上記のような問題提起について、より詳しく説明している。つぎに、第2部では、リスク・マネジメント会計制度の基盤を形成する部分について検討を加える。そして、第3部では、第2部において明らかにした注意点・注目点に関わって、リスク・マネジメント会計制度の諸相に関する考察を行う。最後に、第4部では、主に第2部および第3部において明らかにした制度基盤、および制度の諸相がどのように関連しているのかを明確化する。
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