「資本主義の危機」が叫ばれる時代であるが、「資本」そのものが何であるかは、あまり問われない。マルクスの『資本論』も注目されるが、じっさいにはその内容はほとんど理解されていない。 本書の前半では、『資本論』の「平易な図解」を試みながら、同時に『資本論』の新しい読み方をひとつ提唱している。すなわち、あまり注目されない『資本論第2巻』の末尾にある「再生産表式論」を『資本論』の核心(コア)とみる読み方である。再生産表式は、労働力を商品として売って生きる人々が、身をもって体験する資本主義をトータルに理解するために最適なものとなりうるのである。そしてその「図解」は、総資本と総労働者との有機的な関係を動的に生々しく想起させる。もちろん、『第3巻』までを読み解くために有用な「図解」も多数整えてある。 本書の後半は、各種の再生産表式の検討とその応用の試みである。軍需品の生産を含む再生産表式までも扱っている。これまでの研究者は、再生産表式論がマルクスによってすでに完成されていたものとみなして、あまり関心を持たなかった。しかし、再生産表式とその活用は未完なのである。かりに、最晩年のマルクスが再生産表式とその活用のあり方の考察を仕上げ、その理論水準で『第3巻』を書き直していたとすれば、はたしてどうなったであろうか。興味深いテーマにつながる可能性を秘めている。本書は、こうした観点に立っている。そして、宇野弘蔵『経済原論』の再生産表式論を受け継ぎながら、その問題点を検証し、拡張再生産の諸条件に関する一般式なども導く。そのさいにも、各種の「図解」が活用される。 『資本論』研究はまだまだ途上にあって、これを継承する次世代の登場を願っての一冊でもある。
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