十八世紀末、革命前夜のパリに登場した奇跡の施術師アントン・メスメルの催眠療法はたちまち人々を魅了し、その動物磁気説は、物議をかもしながら全西欧へとひろがっていった。その〈無意識〉の発見は、後のフロイトの精神分析を準備するが、一方でメスメリズムはドイツ・ロマン派において魔術と混淆し、人を呪縛し支配する暗い力の源泉と化す。ホフマン、クライストからバルザック、ポー、ホーソーンをへて、ヘンリー・ジェイムズ、D・H・ローレンス、トーマス・マンへ、さらにはカリガリ博士、ヒトラーへと受け継がれていく〈魔の眼〉の系譜をたどりながら、疑似科学が時代の精神、文学作品にあたえた影響を跡づける。
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