本書は予備知識を持たない人に理論物理学の全体像を完全に理解してもらおうという野心的な試みである.一言で言えば,ランダウ・リフシッツの『理論物理学教程』に現代物理学の内容を加え,枝葉末節を省いて大幅に縮小化したものを目指した.もちろん20世紀の偉大な物理学者であるランダウの足元にも及ばない著者にとっては無謀な試みだったかも知れないが,ある程度の目的は達したものと自負している.理論物理学を網羅的に解説するのではなく,本質を理解するために必要な部分を筋の通った一つの物語に仕上げたものである.本書を読めば,我々が最終的に求めている究極理論を目指す道のりの第一歩を踏み出すことができる.また身の周りで起こる現象を完全に理解するためにも役に立つはずである.たとえば,晴天の空が青い理由,磁石が引き合う理由なども本書を読めば完全な理解が可能である.水星の近日点の移動は一般相対論の補正によって初めて観測値と一致させることができるが,補正の前のニュートン力学による計算や運動学的な歳差運動も知らなければ本当に理解したとは言えないだろう.その辺を全部含めて解説した本は見当たらないが,本書では徹底的に解説した.その他,量子力学におけるフォン・ノイマンの無限退行の意味などは一般向け解説書などにも書かれているが,基礎から完全に解説したものは原書以外には見当たらない.これも本書で分かりやすく解説した.本書で使う数学については高校の数学程度は仮定したが,少し高級な数学については付録で説明した.『宗教は信じることから始まるが,科学は疑うことから始まる』
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