【2022年度日本経営学会賞(著書部門)本賞受賞】
戦前に大きな成功をおさめた鐘紡。戦後は衰退して最後には破綻した。本書は、膨大な社内資料や当事者の証言から、戦後の過程(プロセス)に解像度高く迫り、組織衰退のメカニズムを探求していく。そこで見えてきたのは、当事者の必死さ、誤算、恐れ、弱さ、罠に陥っていく様や、一人一人の思惑とそれらの掛け違いであった。
成功した経験をもつ組織がなぜ衰退してしまうのか、と問えば、多い答えは、成功から学習したことの慣性が、環境変化への適応を妨げるから、というものだろう。とはいえ、人は失敗から学習することもできるはずだ。環境変化に際して大きく失敗すれば、失敗から学習して新たなやり方を取り入れることもできる。だが、それがうまくいくとは限らない。つまりこの問いは、容易には答えられないし、かといって気にせずに済ますこともできない古くから人間社会にある問いであり、持続的成長が求められる今日の企業にとっても向き合うべき問いとして残されている。
成功あるいは失敗から学習するということは、組織の過去についての解釈(歴史)を当事者が活用する営みである。組織の当事者が自分たちの歴史をどのように活用してしまうことが衰退につながるのか。本書が解き明かすのは、等身大の企業人たちが歴史の活用に失敗し、それによってもたらされる組織衰退のメカニズムである。
序章 問題意識
第1章 既存の理論研究
第2章 研究の方法
第3章 事例企業:鐘紡の略史
第4章 衰退事象
第5章 戦後の事業展開1:経営者と既存事業の強化
第6章 戦後の事業展開2:新規事業への進出とその失敗“合成繊維”
第7章 戦後の事業展開3:新規事業への進出とその失敗“非繊維事業”
第8章 業績目標
第9章 組織内の関係性
終章 考察と含意:衰退のメカニズム
補論:レトリカル・ヒストリー研究
レビュー(5件)
迫力の一冊
組織の衰退や失敗については『失敗の本質』『衰退の法則』『組織の不条理』などの書籍が知られているが、それらをはるかに凌ぐ一冊である。課題設定、事例の位置付け方、緻密さ、メッセージの深み、いずれも素晴らしい。調査が難しいであろう、衰退事例を詳細に解明した執念を感じる迫力の一冊である。映画を見ているような解像度の高さで引き込まれる。