トランプ大統領の誕生に大きく貢献したアメリカ中央部の農家と地方有権者。その背景には、輸出志向型の大規模農業の推進による家族経営農家の衰退と、それに起因する農村社会の深刻な空洞化に対する彼らの反発と憤りがあった。社会を構成する一部のセクターの利益が著しく疎外されることで生じた分断と、人種差別主義によって政治的に深められた亀裂の傷は容易に癒えることがない。地方と都市の分断と対立をあおることで自らの岩盤支持を固めてきたトランプ大統領のもとで、苦悩するルーラル・アメリカの実態を活写するとともに、我が国における農業・地域政策の抜本的な変革の方向を含め、その「トランプ劇場」から日本は何を学べるのかを考える。
まえがき
第一章 トランプ大統領を誕生させたアメリカ中央部の地方票
1 予想を裏切った大番狂わせのトランプ当選
2 選挙結果の分析が浮き彫りにしたアメリカ社会の分断
第二章 トランプ支持者の怒りとルーラル・アメリカの直面する課題
1 “忘れられた人びと”の思い
2 不満と怒りに満ちた“忘れられた人びと”の声
3 重い課題を抱え込むアメリカ中央部
第三章 忘れられたルーラル・アメリカ─トランプへ投票した農家の思い
1 農業不況が起こるたびに振り落とされてきた中小農家
2 二〇一〇年代の農業危機と一九八〇年代との比較
3 農家の保守党支持の背景に何があるのか
第四章 ドイツ系アメリカ人社会の保守化の変遷とその背景
1 ドイツ系アメリカ人が多く住む地方の投票結果
2 ドイツ系アメリカ人の開拓の歴史
3 二度の世界大戦を経て、“物言わぬ大衆”へ
4 新たな“棲み分け”現象と“忘れられた人びと”
第五章 深刻な空洞化に直面するアメリカの過疎地帯と移民労働者
1 頭脳流出を止められないアメリカ中央部
2 カンザス州に見る地域食料供給システムの崩壊
3 “壁”建設をめぐるアメリカ中央部の苦悩
移民労働者こそ、地方活性化の原動力
第六章 トランプ大苦戦か、二〇二〇年大統領選挙
ーカギを握る三つの有権者グループ
1 トランプ岩盤支持層の切り崩しに挑戦する民主党
2 トランプに対する農家の不満と反発へ焦点を当てるメディアの広がり
3 表面化する農家の“トランプ離れ”
4 「民主党から誰が出てくるのかが問題だ」
5 カギとなるのは投票率と地方のトランプ離れ、隠れトランプ支持者の増加
終章 “トランプ劇場”から私たちが学べること
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