ハイデッガー=リッカート往復書簡 1912-1933
若きハイデッガーの師弟関係というと現象学の祖フッサールとの関係が語られることが多い。しかし,それ以前より始まる新カント派のリッカートとの師弟関係はどれほど知られているだろうか。
この関係を抜きにして『存在と時間』(1927年)へ至る初期ハイデッガーの思想形成を紐解くことはできない。本書はハイデッガーとリッカートとの約20年間にわたる43通の往復書簡を収録。
この書簡集ではハイデッガーの修学期,1900年代初頭に隆盛を極めていた新カント派の研究と批判により自らの思索を練り上げていった姿を垣間見ることができる。
またハイデッガーのカトリック教会との関係や就職問題,フィンケ,E. ラスク,フッサール,そしてヤスパースとの関係など,実存的な状況も綴られており,「大哲学者」というだけではない側面もうかがい知れる。
さらにハイデッガーの研究発表の資料や講演「問いと判断」,さらに学位論文への主査A. シュナイダーの論評など貴重な「文書資料」も収録。
本書は,かつて日本で多くの翻訳・研究が出されていた新カント派の視点からハイデッガーの思索の現場を照らし,これまで見過ごされてきた思想的鉱脈を見つけるきっかけとなろう。さらに新カント派が時代を担った意味を再考するための有意義な資料である。
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