琉球絵画は、その歴史と同じように独自の輝きを放っていたが沖縄戦によって多くの作品が失われた。今日、残されている琉球絵画の作品は、日本や中国、韓国など東アジア諸国との交流の中で展開した作品群の一角でしかない。その研究は、辛うじて残った断片を手掛かりに、作品の存在を証明していくことから始めなければならないのである。
本書は、琉球絵画の中でも、国王の肖像画「御後絵」や『片目地頭代(喜久村ケツ聡)画像』など数々の名作が描かれた肖像画に焦点をあて、現存する作品だけでなく戦前に撮影されたガラス乾板や豊富な文献資料によって、その描写的特徴や様式の変遷などの考察を行った、琉球絵画史上初の体系的叙述である。
序 章
第1節 研究動向
第2節 本論文の課題
第3節 論文の構成
第1章 御後絵の歴史と戦前の保管をめぐる経緯について
第1節 第二尚氏時代の御後絵とその制作について
第2節 鎌倉芳太郎の調査
第3節 真境名安興・比嘉朝健の調査
第4節 真栄平房敬による証言
小 結
図 版
第2章 北東アジアにおける御後絵の図像的特徴
第1節 御後絵に描かれた多様な図像の考察
第2節 日本の天皇の肖像画
第3節 朝鮮王朝の国王の肖像画(御真)
第4節 中国の皇帝の肖像画コレクション(南薫殿図像)
小 結
図 版
第3章 御後絵の国王衣裳の考察
第1節 明代の国王御後絵の衣裳
第2節 清代御後絵の国王衣裳
第3節 御後絵の国王衣裳が意味するもの
小 結
図 版
第4章 御後絵の家臣団について
第1節 御後絵の家臣団の図様の特徴
第2節 国王の儀仗について
第3節 尚純公御後絵の家臣団との比較
小 結
図版
第5章 御後絵に描かれた家具および道具類について
第1節 御後絵の家具および道具類の図像
第2節 衝立について
第3節 玉座との比較ー香炉の出現と儀礼の変化についてー
小 結
図 版
第6章 『程順則画像』について
第1節 程順則画像』とは
第2節 先行研究と本研究の問題設定
第3節 中国の祖先像の起源と明末清初の状況
第4節 家譜による家臣団の把握と祖先祭祀による琉球の肖像画への影響
第5節 近世琉球期の中国絵画の導入と殷元良の経歴
第6節 『程順則画像』の描写の考察
小 結
図 版
第7章 『喜久村ケツ聡(片目地頭代)画像』について
第1節 像主の経歴
第2節 画賛の成立と家譜の編纂について
第3節 画像に見る像主の表現
第4節 琉球の衣冠制度と絵画表現
小 結
図 版
第8章 首里士族の肖像画の成立と展開
第1節 御後絵様式の肖像画の広がり
第2節 首里士族像画の様式の確立
第3節 メッセージを発する肖像画
小 結
図 版
終 章
第1節 御後絵の図像における国王イメージの表出と変化
第2節 士族層における儒教的な祖先祭祀の受容と肖像画の成立
第3節 琉球の想像画の展開とその要因
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