●著者の探求は精神療法における本質的な治療作用の明確化である。本書では、時間と空間からの理解に加え、質量・動きを伴った「瞬間」という出会いの機会を詳述することで、精神療法という情緒的に密接な二者関係において何が起こっているのかを解き明かしている。
『解説』
スターンの乳幼児心理学の独創性は、「今ここで」の母子関係を徹底して捉えようとする情熱の産物と解される。本書の白眉たるプレゼントモーメント「現在の瞬間」への接近は、この手法の、密接な対人関係、つまり精神療法の世界への応用といえよう。すなわち、主観を描写する試みの中で、主観の持つ個別の情緒性と描写に求められる客観性をどのように両立するかということである。著者の探求は精神療法における本質的な治療作用の明確化であると考えられる。時間と空間からの理解に加え、質量・動きを伴った 「瞬間」 という出会いの機会が詳述されたことで、 精神療法の営まれている場の様相 が解き明かされたのである。 本書に脈々と流れる著者の情熱は、 自然科学的接近と体験的・経験論的接近との出会いの 「瞬間」をも見事に描き出している。 精神分析・精神療法が. 医療・自然科学の視点から実証性の評価という洗礼を受けようと している現在、本書における 「瞬間」 への着目が、 精神療法の側から提唱されたことはきわめて重要である。 これは、 単に 「精神療法を分析する」 にとどまらず、 それを次世代の臨床家にどのように伝達すべきなのかというテーマを孕んでいる。(「監訳者あとがき」より抜粋)
●目次
訳者まえがき 序文 謝辞
一部 現在の瞬間について探究する
第一章 「今」という問題
第二章 現在の瞬間の持つ性質
第三章 現在の瞬間の時間的構造
第四章 生の物語としての現在の瞬間──その組織
第二部 現在の瞬間を文脈上に置いてみる
第五章 間主観的母体
第六章 基本的、原初的動機づけシステムとしての間主観性
第七章 暗黙の了解
第八章 意識の役割と間主観的意識という概念
第三部臨床的視点から
第九章 現在の瞬間と精神療法
第十章 沿っていくプロセス
第十一章 臨床状況において、暗示と明示を織り交ぜること
第十二章 過去と現在の瞬間
第十三章 治療的変化──要約と概括的な臨床的含蓄
付録 微小分析面接
用語集
監訳者あとがき
参考文献 /索引
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