本書は、第一次インドシナ戦争前夜からサイゴン陥落までの30年を振り返り、開戦から終戦に至る歴史的背景と政治的思惑を事実に即して描写し、戦争の本質に迫った大作である。一つひとつの作戦や戦闘、その結果としての災禍が時間軸に沿って詳細に描かれており、時代の空気が変化していくさまが臨場感をもって伝わってくる。
著者は25歳のときに初めて、BBCの特派員としてヴェトナム戦争取材に携わった。その後の人生に大きな影響を及ぼした戦争を俯瞰し、その細部を再現しようとしたのが本書である。当時、取材で訪れた土地を再訪し、三年間で米越仏の生存者100人以上にインタビューを行った。生々しい戦闘シーンに加え、兵士や市民の肉声を巧みに構成したことで、50年前のモノクロ写真でしかなかった出来事の断片が現場の人びとの内面とともに浮かび上がってくる。
英国人という第三者的な立ち位置が、冷徹な筆致、ひいては本書の客観性に利していることは間違いない。戦史ものの体裁をとりながらオーラルヒストリーとしての側面も併せ持つ、稀有な戦史ノンフィクションである。
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本書で採用した記述スタイルに関する注記
用語解説
はじめに
第1章 美女と多くの野獣たち
1 帝国への執着
2 ヴェトミンの行進
第2章 「汚い戦争」
1 力任せの連中
2 結果を甘受するワシントン
3 農民たち
第3章 存在しなかった要塞
1 ザップを待ちながら
2 災いが迫る
第4章 血の足跡
1 放棄、もしくは爆撃?
2 「意志の勝利」
3 ジュネーブ
第5章 双子の専制国家
1 「テロ政権」
2 「われわれが手にした唯一の男」
3 好況期
4 さあ、武器をとれ
第6章 ちょっとケネディ流
1 「彼らは国を失おうとしている」
2 マクナマラ流君主制
3 レ・ズアン、賭け金を引き上げる
第7章 一九六三年──二人の大統領のための棺桶
1 アプバク──小さな戦闘、大きな記事
2 仏教徒の反乱
3 殺戮の時間
第8章 迷路
1 「全員に行きわたるだけの戦争」
2 決定を回避する
第9章 湾に入る
1 虚偽
2 タカ派の台頭
第10章 「いかに進めるべきか、途方に暮れている」
1 下り道
2 コミットメント
第11章 段階的拡大へ
1 「最低の連中」
2 新たな人間、新たな戦争
第12章 「雲をつかもうとして」
1 兵士と水上スキーヤー
2 非友軍の砲撃(アンフレンドリー・ファイヤー)
3 罠と足跡の塵
第13章 汚職とハッカ油
1 窃盗行為
2 統治
3 導師(グールー)たち
第14章 「ローリング・サンダー作戦」
1 石器時代、ミサイル時代
2 北へ向かって
第15章 苦労を引き受ける
1 最良の時、最悪の時
2 友軍
写真クレジット
注記と参照先
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