●これまで摂食障害に関する著作に示されてきた治療の指針や方法の多くは,それに従って治療を進めていこうとしてもまったくうまくいかず,それどころか,翻弄されてすっかり消耗してしまったという治療者も少なくないと思われる。摂食障害の治療は患者にとっても治療者にとっても、極めてパーソナルな経験の部分が大きい。摂食障害を病む人が治療者に問いを向けてくるそのときをどのようにやりぬいていくか。それは治療の要であると同時に,摂食障害の治療者が成長する機会でもある。手荒い経験に生き残った臨床家にこそ認識でき表現できる臨床感覚を,若手あるいは手詰まりを感じている臨床家や医療スタッフに,熟達した治療者たちがいきいきとした臨場感をもって伝える鼎談。
●目次
プロローグ 鼎談を始めるにあたって 松木邦裕
I イントロダクション
何故にこの鼎談か
摂食障害の歴史
摂食障害は現代の病ではあるが「現代病」ではない/八○年代から摂食障害の病態が多様化しはじめた
臨床での問題点
見立て/治療/社会・文化
摂食障害との出会い
「丸腰で猛獣と格闘するような……」/摂食障害には病理はない?/困難であるからこそのチャレンジ/思春期葛藤を抱える人たち/「力道山精神療法」/頑なさの中の真剣さ/心療内科での経験ーー食欲亢進にワイン?/精神科開放病棟での経験/閉鎖病棟での経験/拒食を過食に変える/精神分析的な考え方の応用/生き方を間違った人たち/受容・共感と退行/真剣さと倒錯と
II 摂食障害とは何か
見立て
DSMとlCD/鑑別診断/摂食障害の三つの分類/「マイナスK」
病の本態
生物学的な問題か心理学的な問題か/ダイエットや食生活の問題の背景にあるもの/生物学的な変化は可逆的
III 摂食障害の病態と病理
病態
思春期の不安から拒食へ/過食・嘔吐と下剤濫用/チューイング、反芻
病理
禁欲に達成感がある/罪悪感/「認知のゆがみ」はあるか/こころの姿勢
IV 摂食障害の治療
こころの問題を回避させない
行動制限という枠組み/本来の問題への対応/問題行動への対応/看護師さんとの関係が大事/患者の「実力」に見合った目標を立てる
やせている体をとう手放すか
薬物の効果/他のスタッフとの協力/生命維持のためのぎりぎりの線を見きわめる/こころの問題を問い続ける/苦痛な状況から脱するために食べる」という発想についていけるか
「否認」の問題を明らかにすること
身体の回復と否認の解消が治療前半の目標/「ただ体重を増やせばいいと思っているのか?」/嘘や乙まかしはその場で取り上げる/治療者側の姿勢/治療者の仕事の意味と達成
V 摂食障害の予後と予防
治癒はあるのか
パーソナリティが全部変わることはありえない/治療者の内在化/「治った治らない」は治療のターゲットにもよる/経済原則を超えて/新しい人間の不幸
予防はできるのか
家庭のあり方、親子関係のあり方
VI 要望
治療者に伝えたいこと
治療者がこころに留めておいてほしいこと/摂食障害という疾患の特殊性/身体に対するアンビバレンスと母親に対するアンビバレンス
患者さんと家族に伝えたいこと
自分が本は何を求めているのか/こころを育てる過程の大切さ/悲劇は手放すべき
補遺 摂食障害の精神分析的な理解とアプローチ 松木邦裕
エピローグーー幕を閉じる前に
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