“形而上学”という視点から『純粋理性批判』を総合的に考察、カント哲学の核心に挑む意欲的な試みである。『純粋理性批判』を一体的でヴェクトルをもった作品として読む独自の方法により、重要概念を吟味するとともにカントのメッセージを形而上学のカテゴリーとの関係から掘り下げ、さらに自然神学批判がカントの世界理解に対してもつ意味を神の存在証明を通して解明する。次に哲学史との関連で、カントとドイツ講壇哲学やニュートン、バークリ、ライプニッツ、スピノザとの接触が、カント哲学の形成と解明にどのように還元されるかを分析し、また1930年代に全貌を現したカントの『遺稿』はカントがそれまでの哲学史と自身の哲学を結びつける努力であり、「超越論哲学の最高点」と『純粋理性批判』の“完成”を目指したものであることを明らかにする。さらに平和、歴史、神など理論哲学以外のテーマを『純粋理性批判』との連関で捉えることにより、啓蒙主義者カントの背景に形而上学者カントを読み取る。最後にこれら一連のカント考察の結果、19世紀に確立した既存の近世哲学史にカント哲学が収まらないとして新たな哲学史像を提案、カント哲学の現在を示す。
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