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円仁、貫之、孝標女、定家、宗祇、芭蕉、そして名もなき旅の遊女がつづった日記ーー 数百年の時をこえて「永遠の旅人」の声が聞こえる 読売文学賞・日本文学大賞 受賞作 日本人にとって日記とはなにか。平安時代の『入唐求法巡礼行記』『土佐日記』から江戸時代の『野ざらし紀行』『笈の小文』『奥の細道』まで、八十編におよぶ日記文学作品の精緻な読解を通し、千年におよぶ日本人像を活写。日本文学の系譜が日記文学にあることを看破し、その独自性と豊かさを探究した、日本文化論・日本文学史研究に屹立する不朽の名著。 そもそも私が日記に心を向けたのは、(中略)今日私が知る日本人と、いささかでも似通った人間を、過去の著作の中に見いだす喜びのためだったのである。最もすぐれた日記は、その作者を最もよく表し、逆に最もつまらぬ日記は、先人の詩歌や日記から学んだ歌枕の伝統を、ただいたずらに繰り返すのみである。日本人はいにしえより今日に至るまで、読書によって知悉する風景を己自身の目で確かめ、所の名物を己も口にすることに、格別の喜びを抱いてきた。--<本書「終わりに」より> ※本書は、1984年に朝日新聞社より刊行された同名の書籍の上下巻を合本にしたものです。 1 平安時代 入唐求法巡礼行記、土佐日記、蜻蛉日記、御堂関白記 ほか 2 鎌倉時代 建礼門院右京大夫集、たまきはる、明月記、源家長日記 ほか 3 室町時代 大神宮参詣記、都のつと、小島の口すさみ、住吉詣 ほか 4 徳川時代 戴恩記、丙辰紀行、近世初期宮廷人の日記、遠江守政一紀行 ほか
レビュー(17件)
購入してすぐ読み始め大変面白く読ませていただきました。
土佐日記や更級日記など、高校の古文で習った記憶のある作品もいくつかあるけれど、 ほとんどはタイトルさえ初耳の日記ばかり。 おそらく現代語で読んでも退屈な内容なんだろうなあと想像がつく作品も多いです。 驚かされるのは、たとえ文学的価値には乏しいと思われる日記も丹念に読み込むことで、 何百年前かに生きた日記作者が残した言葉のなかに、現代の日本人にも通じるなにかを 汲み取ろうとする著者の姿勢。 名もなき小品のなかにも、ふとその作者の個性が感じられる一節を見つける キーン氏の深く温かい人間洞察に感じ入りました。 タイトルの読みは「はくたいのかかく」。 『奥の細道』の冒頭「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」に由来する、 ということを知っただけでも、私には一読の価値が十分ありました。