『壺坂霊験記』は、明治20年(1887)に浄瑠璃として初演されたのちに歌舞伎や講談、浪花節でも上演されて人気を博した。妻の献身と観音の霊験により盲目の男が開眼するというストーリーや、お里・沢市という登場人物は広く人々に親しまれている。本書は、近代芸能史上にユニークな位置を占めるこの作品について、宗教的物語が芸能化してさまざまなジャンルに展開する過程をたどり、時代背景からその特質を明らかにする。
序章 はじめに
第一部 成立
第一章 西国霊場の霊験譚
一ー一 西国霊場と壺阪寺
一ー二 宗教的物語としての沢市開眼譚
一ー三 歌川豊国の錦絵『観音霊験記』
一ー四 結び
第二章 生人形
二ー一 松本喜三郎の『観音霊験記』-東京
二ー二 松本喜三郎の『観音霊験記』-大阪
二ー三 生人形『観音霊験記』における沢市開眼譚
二ー四 結び
第三章 浄瑠璃
三─一 明治一二年の『西国三拾三所 観音霊場記』
三─二 明治二〇年の『観音霊験記 三拾三所花野山』
三─三 夫婦の物語としての『壺坂霊験記』
三─四 結び
第二部 展開
第四章 歌舞伎
四ー一 悪者・雁九郎の登場
四ー二 歌舞伎『壺坂霊験記』の配役
四ー三 二つのバージョンの成立
四ー四 早替りという演出への評価
四ー五 結び
付論 勝諺蔵『西国三拾三所 観音霊験記』
四ー六 題材と趣向
四ー七 勝諺蔵『観音霊験記』における沢市開眼譚
四ー八 付論結び
第五章 講談
五ー一 『壺坂霊験記』の講談化
五ー二 旭堂南陵の『壺坂霊験記』
五ー三 清草舎英昌の『壺坂霊験 お里沢市』
五ー四 結び
第六章 浪花節
六ー一 SPレコードにおける詞章
六ー二 新聞ラジオ面における詞章
六ー三 浪花節『壺坂霊験記』の典拠および特質
六ー四 浪花亭綾太郎の『壺坂霊験記』
六ー五 結び
第七章 芸能から宗教へ
七ー一 宗教と芸能
七ー二 生人形『観音霊験記』の影響
七ー三 浄瑠璃『壺坂霊験記』の影響
七ー四 結び
第三部 時代性
第八章 改良
八─一 「音曲改良の趣意」
八─二 『壺坂霊験記』における「音曲改良」
八─三 更なる改良
八─四 結び
第九章 読まれ方の変遷
九─一 貞節をめぐる物語
九─二 夫婦愛の物語という読み方
九─三 貞節から夫婦愛へ
九─四 結び
参考文献
付録一 (解題・翻刻)加藤富三郎編輯・出版『西国順拝生木偶評判新報第一号』
付録二 (解題・翻刻)豊沢新三郎使用『西国三十三所 壺坂寺の場』
あとがき
索引
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