「書く」ことが、絶望を超越した
かつては誤解に基づく激しい差別と偏見に晒されていたハンセン病。青年・北條民雄は、その病に罹患し、同病者だけが共同生活を送る療養所に入る。社会から隔絶された絶望的な状況の中で、北條が生きる希望を見出したのは「書く」ことを通してだった。書簡を通じて私淑した川端康成の支えもあり、芥川賞の候補にもなった代表作「いのちの初夜」。この作品を読んで衝撃を受け、大学で北條民雄について研究したという俳優・作家の中江有里さんを講師に迎え、現在のコロナ禍で改めて顕在化した差別や偏見というテーマについても考えながら、みずみずしくも巧みに練られた物語の中に、絶望の底にあってもなお折れない「生きる」意志を読みとく。
レビュー(2件)
昨年、北條民雄さんの『いのちの初夜』を拝読しました。 正直読み終えるのに数か月かかった一冊。 著者の北條さんはハンセン病にかかり自分で見て感じた世界を書かれているのかなと思うと、その一文一文がとても重く感じました。 生きる、そして死ぬという事についてとても考えさせられた作品です。 2月のEテレさんの「100分で名著」の番組に合わせて、私も1週ずつページを読ませて頂きましたが、1人の人間としても、文学的にも興味が持てた方です。 自分の考えでは気付けなかった部分もあったので、番組やコチラの本はとても参考になりました。 若くして亡くなられ、数年前に本名が公表されたとのこと。 これからも北條さんの作品を読んでいきたいと思います。
番組を観てから本書を購入しました。 放送を1回観て本書の同じ回も読む、という形で進めました。 ハンセン病についての解説も含めつつ、中江有里氏による解析などが進められていきます。 氏は作家活動もしているだけあり、文章が読みやすい。 第4回の内容は、回の冒頭に記載があるように氏の個人的エピソードも含まれていますが、放送がそうであったように、小説「いのちの初夜」から離れた内容です。 北條民雄が小説を書いていく上での苦悩は、小説を書く中江氏だから解析できた部分もあったと思います。 作家でなく、研究家だとその点の理解や共感度が違うと思うので。 また、第4回で紹介されている、北條が書いた「すみれ」ですが、少なくとも創元社の全集(上巻)には絵本の形ではないですが、収録されていることを書いておきます。