地域医療を支える公立病院の経営悪化が深刻な社会問題になっており、病院閉鎖による医療不在も現実のものとなっている。本書ではアンケート分析、評判分析、経済効果の分析手法、および病院のガバナンスの事例を加えて、今後の公立病院改革の方向性について経済学的なデータに基づき明確にその道筋を示した。
まず、福岡県八女・筑後医療圏において、八女市の公立病院は高額の赤字となっており、経営改善の一方策として筑後市の市立病院との統合が検討された。しかし、統合により1つの自治体病院を閉鎖することによる地域社会に与える影響は甚大である。そこで2018年10月に病院に関するアンケート調査を行い、その結果について多角的な考察を行った。
次に、福岡県八女・筑後医療圏における公立病院について、テキストマイニング手法の一つであるKH coderを用いて評判分析を行った。評判分析は、経済学の不確実性理論の一部であり、情報学のテキストマイニングを用いることで可能になる。考察結果として、患者側の意見は分析者の恣意的な判断に影響を受けず、客観性または信頼性を維持し、バランスよく評価していることを確認できた。
さらに、公立病院の存続可否に関し,人口規模が類似している西日本の4つの公立病院の経済効果を算出し,比較検討を行った。考察方法は,病院事業決算状況,地域産業連関表,地域経済分析システムなどのデータ分析によった。集約・統合などによる「高付加価値型」経営だけではなく,最近の技術的水準の分析から積極投資,維持,統合縮小などパターン化した方向性を導くことが効果的であることが明らかとなった。
最後に、公立病院の存続問題が住民運動にまで発展した事例として千葉県の中小自治体病院を取り上げた。公設民営の医療法人ではガバナンスの問題が多く発生したため、市長自身が代表となり医療公社方式で直接運営することにした。しかし,病院規模,診療機能,近隣の病院との関係上,病院の赤字経営,財政負担は続いている。現在、新型コロナによる診療の縮小,厚労省による全国的な公的病院の統廃合の波が押し寄せており,新たな施策の展開に迫られている。ガバナンス,医療マネジメント能力,地域特性の各視点から多角的な分析を試みた。
【目次】
第1章 地域医療圏における自治体病院の役割
ー 病院統合・再編に関するアンケート -
1.福岡県八女・筑後医療圏と自治体病院について
2.自治体病院の現状について
3.アンケート調査について
3.1-アンケート調査の目的と内容
3.2-アンケート実態調査の方法
3.3-アンケート調査を実施するにあたっての仮説
3.4-アンケート結果
3.5-アンケート調査結果の考察
4.結語:まとめと今後の課題
第2章 テキストマイニングを使った病院の評判分析
ー KH Coderを利用して -
1.評判とは
2.テキストマイニング(KH Coder)とは
2.1-KH Coder概要
2.2-テキストマイニングの手順
2.3-八女・筑後医療圏の公立病院に関する評判分析結果
2.4-評判分析の考察について
3.結語:まとめと今後の課題
第3章 地域における赤字公立病院の経済効果
1.総務省病院事業決算状況
2.地域産業連関表による経済効果とRESAS
2.1-公立八女総合病院の経済効果と地域経済分析
2.2-山鹿医療センターの経済効果と地域経済分析
2.3-小城市民病院の経済効果と地域経済分析
3.公立病院統合の結果 -成功事例の分析ー
4.四病院の医療技術水準について
5.考察
6.結語:まとめと今後の課題
第4章 中小自治体病院のガバナンスとマネジメント
1.銚子市立病院の休止からリコールまで
2.再開の道筋
3.ガバナンスの欠如
4.未熟な病院マネジメント能力
5.市民の保健医療の課題
6.地域の医療機関との連携を考えた市立病院の課題
7.銚子市立病院の沿革と島田総合病院
8.結語:再検証病院の対象となって
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