木肌に付いたシミや変色など、物理的な汚れを落とし、経年により古びた建物の視覚的な印象を操る「洗い」の仕事・技術を、日本建築の歴史から解明する。また、伊勢神宮に象徴されるような「新しさ」の美意識と、茶室のわびさびのような「古び」の美意識が、どのように醸成され、定着していったのかを考察し、「建築の経年」への新たな視点を与える。
序章 日本建築における「洗い」
一 建物を洗うーー本書の目的
二 洗い屋鷲山金次郎の引札
三 洗いと洗い屋ーー洗いの工程と用語の定義
四 木肌処理技術研究の意義
五 既往研究
六 本書の構成
第一章 木肌削り出しーー古代から近世に至る痕跡と記録
一 建物に残された削りの痕跡
二 近世文書に見る「しらけ」「上削」「白削」
三 「木肌削り出し」の時代的傾向
第二章 洗清と清鉋ーー中世・近世伊勢神宮遷宮記録に見る竣工儀式
一 「洗清」とは何かーー新築の神殿を洗う
二 「掃除」とは何かーー中世の仮殿遷宮で行われた二つの清め
三 「清鉋」とは何かーー戦国期の「シサリカンナ」から始まった
四 元禄二年遷宮記に見る造営中神殿の「古び」問題
五 熱田神宮との比較から見る「洗清」の道具
第三章 灰汁洗いーー近世作事文書に見る洗いの記録
一 蕎麦藁を用いた左官の洗い
二 灰汁の洗いと洗い屋の発生
三 洗いの工事種別の確立と定着
四 本途帳にみる洗い
五 洗い屋たちの仕事ーー洗いの用途物・施工者・種別
六 確立から発展・成熟まで
第四章 近現代の洗いーー「洗い」と「木肌削り出し」の発展と変容
一 洗い屋たちの近現代ーー曹達導入と職人の証言
二 洗いと削りと古色の併用ーー文化財修理工事記録と鷲山金次郎
三 洗いの縮小と古色の拡大ーー二条城の昭和修理
四 古びと清浄の併存ーー桂離宮の昭和修理
五 式年造替を再現する洗いーー熱田神宮の近現代造営
六 式年造替を再現する削りーー伊勢神宮棟持柱の古材転用
終章 洗いか古びかーー日本建築の経年美
一 三つの系譜が織りなす洗いの変遷ーー削りと清めと汚れ落とし
二 日本建築の美と経年
三 建築の経年に対する美意識の変遷
四 経年と清浄の融合ーー最適な建築の経年美を実現する
附論 洗いの道具についてーー桶・箒・コソゲ・薬液
一 洗いに用いられる桶類
二 洗いに用いられる箒と簓
三 コソゲと鉋、その他の道具
四 洗い道具の特性
五 洗い道具と洗いの起源
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