ペスト
: キャロリーヌ・コステドア/ミシェル・シニョリ/井上 雅俊
「最初に恐怖、その後忘却……」
本書は、14世紀に中央アジアに始まり、ヨーロッパ全域を襲って17世紀まで繰り返された第2のパンデミックを中心に、ペストの歴史から最新の研究までを概説する。
集団墓地を主な研究対象とする著者の一人は、考古・人類学的な分析アプローチから、埋葬された「遺体の年齢、性別、衛生状況に加え、埋葬場所の地理的な配置や葬具の有無、壕内での配置を観察し、ある共同体におけるペストの流行の時間的な経過をより具体的に把握」(「訳者あとがき」)する。記録史料が示すもの(ときに記録自体が難しくなるという状況)についても興味深い。
もう一方の著者は集団遺伝学が専門である。この30年で大きく発展したゲノム研究とそれに関連した解析技術により、発掘された「生物学的史料」からペスト菌の特定が可能になった。また細菌の進化の過程についても見直しがなされているなど、研究の現状についても触れる。
序
第一章 ペスト菌とは、なにものか?
1 細菌の発見
2 イェルサンの病原菌
3 病原巣(レゼルボア)と媒介生物(ベクター)
4 病気の臨床的特徴
第二章 古代の歴史?
1 第一のパンデミック
2 第二のパンデミック
3 第三のパンデミック
4 現在の状況
第三章 神の怒りと医者たち
1 今日に至るまでの認識
2 十八世紀における医学的議論の例
3 今日の医学
第四章 流行の帰結
1 人口の減少
2 流行対策を組織する
第五章 目の前の死
1 歴史的な文献史料から得られるデータ
2 生物学的史料から得られるデータ
第六章 災厄のDNA
1 ペストがペスト菌によるものであると特定する
2 ペスト菌の進化の歴史
3 「黒死病」のパレオゲノミクス
結論
謝辞
訳者あとがき
参考文献
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