内容紹介 本書は米国で先行出版した「Tradidional Karate」の日本語版で若干の増補改訂があります。 空手は現在世界中で愛好される中、多くはアレンジされ、ミックスマーシャルアーツになりつつあります。 しかし、もともと空手は武術、武道として継承されてきたもので、根底に命をかけた闘いの技法と相手を尊重する思想が包含されています。一撃で相手を倒す技術を磨く稽古に加え、その技術を発動しない心のコントロールを養うのが武道の本質であり修業です。 この一生使わないかもしれない技術を磨くことが武道の日本的美学であり本質です。この稽古、修業の過程で人格を磨き、忍耐力を養い、環境適応能力を身につけるのです。 私は、この先達が残してくれた文化的遺産を単なる闘いの技術としてだけシェイプしてしまうのではなく、型などに含まれる動作や名称も、なるべく多く後世に残したいと考えました。そして書籍にすることで、これからもますますショー化、ビジネス化していくであろうカラテと一線を画し、伝統を重んじた、日本という国が育んだ文化を少しでも残すことができると考えました。 2020年には日本でオリンピックが開催されることが決定し、経済的効果も見込まれる中、今や日本全体が浮き足立っているように感じます。日本の武道である空手もオリンピック参加が期待されています。 しかし今までIOCが空手をオリンピックに採用しなかった理由は何だったのでしょうか。空手団体が参加を希望し、IOCが喜んで空手を種目化するために何が予想されるかと言えば「観る者を楽しませるゲーム性」「観客に理解できる判定」「統一された組織」を前面に押し出すことになるでしょう。そして空手がKarateとしてオリンピック種目となったときには進化した空手を見ることができるでしょう。それは私にとっても大変嬉しいことです。 ただし、今後空手がオリンピック種目になったあかつきには、競技Karateがスタンダードに考えられるようになり精神性を重んじた伝統空手は過去のものとされる危惧もあります。 本来の武術としての空手は人格を磨き、万が一の場合には技術を持って相手を制する「一撃必殺」のものであり、ゲーム性を楽しむものではありません。やったりやられたりというものではなく、正義を持って一撃で相手を倒すのが本質です。その本質を表すのが武術としての型です。 今後進化し続けていくカラテは恐らくデフォルメされていくでしょう。実際に使えないような、空中をクルクル回るような形(カタ)やフェンシングのような判定機を使った組手になっていくかもしれません。それはそれで非常に楽しいと思います。 ですから、なおさらそのルーツになる文化的背景を持った伝統空手を継承していく必要性を感じて本書を著しました。本書が空手道学習者の一助になれば幸いです。 真月流空手道古武術宗家 阿部泰志
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