財務公開制度の成立を研究するにあたり通常強調される歴史的事実は、1929年に起こった株式恐慌であり、さらにその結果もたらされた連邦公開規制と投資家保護の要求である。しかしながら、アメリカにおけるその成立を財務公開思想の形成という側面からたどってみるならば、その構想は19世紀末から準備されていたことが明らかにされてくる。そこからいえることは、アメリカにおける財務公開制度の構想は、当時最大の懸案事項であった「トラスト問題」と対峙する中で生み出されてきたのであり、株式恐慌はこうした構想を具体化させる1つの引き金に過ぎなかったのではないかということである。本書の目的は、アメリカにおける財務公開制度成立の契機を、こうした「トラスト問題」によって引き起こされた競争秩序の再構築という営みの中に求め、資本主義経済システムにおける財務公開制度の意義をとらえ直そうとするところにある。
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