エスニック・アメリカを問う
: 「人の移動とアメリカ」研究プロジェクト/飯野正子
執筆者はみな、津田塾大学で飯野正子(津田塾大学前学長)の
セミナーで研鑽を積んだ。
アメリカ研究や移民研究の分野では、トランスナショナル、
ボーダーランドが研究の主要キーワードとなって久しいが、
飯野氏は早くから理論だけに依存しない歴史家としての徹底した
史料の検証によるいわば「下から」のトランスナショナルな様相の
炙り出しを行なってきた。
また飯野氏は、『エスニック・アメリカ』(有斐閣、1984年)等を通じて、
アメリカがエスニシティ・人種の多様な社会であり、
そのために生じたさまざまな状況や問題を日本に紹介することに
大きく貢献してきた研究者の一人。
本書は、アメリカ史における日系人を中心とした
さまざまな移民の事例研究を基本としながら、各メンバーが
従来の研究では見落とされてきた内容を考察し、
その研究成果の一部を論じている。
テーマは多岐にわたっているが、地道かつ丹念な資料収集および
資料の解読と分析を経て執筆にあたっていることは、
各研究の共通点の一つして挙げられる。
丁寧な実証研究の成果は、流行の論争にも揺るがず、
長く読み続けられ、そこに人や社会のありようについての普遍性が読みとれる。
(1章)「アジア」の包摂と排除
(2章)アメリカ社会に埋もれた一世
(3章)日本人移民女性と裁縫
(4章)汎ラティーノ・アイデンティティ構築の可能性
(5章)日本人移民とパリ講和会議における人種差別撤廃案
(6章)移民地川柳からアメリカ川柳へ
(7章)フロイド・シュモーと「広島の家」
(8章)福生市・立川市周辺の米国軍人の居住
と『福生新聞』にみる地元の反応
(9章)小説『非色』を読む
(10 章)エスニシティ・人種関係の書籍と映画
レビュー(0件)