アルコールや薬物の依存・嗜癖の問題は多様化・蔓延化しており、ギャンブルやゲームなど、薬物によらない嗜癖の問題も顕在化するにつれて、心理職の関与も大きくなった。加えて、急速な高齢化の進行や職域でのストレス増大など、メンタルヘルスの危機は高まり、依存・嗜癖問題の拡大が懸念される。従来のように違法薬物の使用を規制し、規範意識を高めるだけではこうした問題には対応できず、問題の背景にある「人間の姿」を理解することがますます重要になった。
本書は、個別の検査法や治療・介入技法の解説には重点を置かず、人間の了解的な理解を試みる心理学の原点に立ち返って、依存・嗜癖(アディクション)問題とどのように向き合うかを考える。実験心理学、神経科学、薬理学を専門とする著者が、アディクションへのひとつの試論を、軽妙な語り口で臨床・支援の現場に投げかける力作。
まえがき
第1章 アディクションという問題
第1節 「アディクション」とは
第2節 問題の多様性
Column1 薬物の自己投与という実験
第3節 アディクションへのアプローチ
Column2 映画に描かれたアディクションと世相
第2章 「生きづらさ」--家族という桎梏
第1節 「生きづらさ」とは何か
第2節 「生きづらさ」と家族
Column3 家族療法こぼれ話
第3節 現代の社会と「生きづらさ」
第3章 自分という重荷ーー「自尊感情」
第1節 自尊感情とは何か
第2節 自分を守るために自分を「下げる」
第3節 自尊感情と自己効力感の違い
第4節 自尊感情という概念の拡がり
第4章 孤独について
第1節 孤独感とアディクション
第2節 孤独感の由来
第3節 孤独であることの意味
第5章 私は変わりたいーー変身願望とアディクション
第1節 変身を望む心
第2節 変身願望の心理
第3節 暴走する変身願望
Column4 ビート・ジェネレーションとドラッグ
第6章 「自分を壊したい」願望
第1節 アディクションと自己破壊
第2節 自分を「壊したい」願望
第3節 自分という存在の不確かさ
Column5 病跡学が教えるアディクション
第7章 「その人々」と共に生きる
第1節 支援が目指すもの
第2節 行動・たましい・エビデンス
Column6 測りたいもの、測っているもの
第3節 新生のモデル
第8章 新生への道(1)--個の確立
第1章 新生の鍵
第2節 メタ認知
第3節 語りのパワー
第4節 自己とは何だろうか
第9章 新生への道(2)--個の超越
第1節 「わたし」から「わたしたち」へ
第2節 新生の同伴者
第3節 自助グループの「曲がり角」
第4節 人とつながる「開かれた」心
第10章 アディクションと文明・人間
第1章 アディクションのルーツ
第2節 近代社会とアディクション
第3節 未来への責任
文献
あとがき
人名索引
事項索引
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