鎌倉時代の掉尾を彩る絵巻、『春日権現験記絵』初の全注釈成る。承平七年(九三七)の託宣にはじまり嘉元二年(一三〇四)の奇瑞までを記す春日明神霊験伝承の集たる本絵巻は、多くの文化的・社会的事象を織り込んだ、汲めども尽きせぬ豊かさに満ちている。ものがたられる伝承が史実を内包しつつ、高度にことの本質を描き出すことは確かにあり得たのである。そうした、含意や寓意が伝承の行間に明滅するさまを、本注解においては、説話研究の立場からできる限り捉えようと試みた。これは、人文学における学際的研究の必要性が叫ばれるなか、文学の領域からの日本文化学講築へ向けた成果報告でもある。
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