20世紀初頭、狂気を称揚する表現主義的表象に疑いのまなざしを向けた作家・作品を読みなおし、「正常」と「異常」の境界を撹乱するオルタナティブの狂気イメージを探る。
序章 ドイツ語文学における「狂気」表象の変遷ーモダニズムの時代まで
1 はじめに
2 「理性主義」の時代
3 市民社会と狂気
4 ロマン主義の時代と二分法
5 リアリズムの時代における狂気モチーフの衰退
6 変質論と「人生の精神医学化」
7 再接近する芸術と狂気
8 モダニズムの時代とその後
第1章 表現主義文学とナチス・ドイツー「精神疾患」イメージの類似性
1 はじめにー表現主義の狂気表象とナチス・ドイツ
2 精神医学の歴史とナチス・ドイツ
3 表現主義文学における狂気表象の検討
4 「表象=代理」批判を受けて
5 本書の試みーシュニッツラー、デーブリーン、ツヴァイク
第2章 アルトゥル・シュニッツラー『闇への逃走』における精神医学批判ー「体系」へ逃走する精神医学
1 はじめにーシュニッツラーの精神医学批判とラインバッハ
2 先行研究の状況ー「自由主義」対「決定論」の図式の限界
3 見逃されてきた転換点
4 ラインバッハ再考
5 おわりにー「普通の人」が狂うことの意味
第3章 シュニッツラーの医学テクストにおける「健康」と「病」-クラフト゠エビングとロンブローゾへの懐疑的見解
1 はじめにー精神医学と侵食される自由意志
2 アルトゥル・シュニッツラーと精神的な「健康」と「病」
3 クラフト゠エビング『性的精神病質の領域における新しい研究』に寄せた書評
4 ロンブローゾ『天才論』に寄せた書評
5 おわりにー病人は怠け者か
第4章 アルフレート・デーブリーン『たんぽぽ殺し』と精神医学ー理解可能の「精神疾患者」と理解不可能の「健常者」
1 はじめにー「社会に貢献する健康な人間」のモデル
2 『たんぽぽ殺し』と表現主義的狂気観ー「称揚」か「軽蔑」か?
3 『たんぽぽ殺し』成立の背景
4 『たんぽぽ殺し』読解
5 『ベルリン・アレクサンダー広場』との対比
6 おわりにーホッヘのモデルの否定
第5章 シュテファン・ツヴァイクの枠物語とフロイトの精神分析ー話を聴く語り手
1 はじめにーツヴァイクの要らない「枠」とフロイトの精神分析
2 フロイトの勇気、フロイトの理論
3 類似と違い
4 主体性をめぐって
5 おわりにー剥奪される医師の特権と遍在する狂気
終章 無謬の解は存在するか
註
あとがき
参考文献一覧
人名索引
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