「言葉は、常に余剰と余白をもって、そこに在る。--」
群像新人文学賞(評論部門)を受賞した「言語についての小説 リービ英雄論」他、金子光晴、多和田葉子、磯崎憲一郎、平野啓一郎、朝吹真理子、絲山秋子、李恢成ーーその作品と人を紡ぐ20篇。渾身の文芸評論集。
第一章 作品と作家
第一節 擬態の仕掛けの向こう側 金子光晴『風流尸解記』
第二節 言語についての小説 リービ英雄論
第三節 内なる他者の言葉 磯崎憲一郎と平野啓一郎の交叉
第四節 日常と異邦 “故郷”の崩壊
第五節 ロゴスの極北 多和田葉子試論
第六節 内破の予兆 諏訪哲史論
第七節 静謐にして、永遠の…… 朝吹真理子『流跡』・『家路』・『きことわ』論
第八節 空虚の密度を見つめて 林京子論
第二章 本や人のこと
第一節 存在の家としての物語 小川洋子『人質の朗読会』
第二節 死者の気配を記憶する者たち 絲山秋子『末裔』
第三節 語りの迷宮 多和田葉子『雪の練習生』
第四節 時代のふるまい 橋本治 『リア家の人々』
第五節 永遠の手ざわり
第六節 失われた時を求める道具
第七節 窓の外からずっと 李恢成『地上生活者 第四部 痛苦の感銘』
第八節 『地上生活者』への旅
第九節 記憶の匂い
第十節 結末のない物語 李恢成『地上生活者 第五部 邂逅と思索』
第十一節 Y・H先生の思い出
第三章 補遺 物語の住人
レビュー(3件)
著者の「言葉」の魂に圧倒された!
文芸評論というものを初めて読んだ。今回著者が取上げた多くの作品の殆どは未読である。いや私のみならず同類の輩も少なくはないであろう。ならば著者はこの無学な私(同類の輩)を本著において、どのように説き伏せるのか!とある意味挑戦的な(無礼な)態度で読み始めた。結果、著者が投げ掛ける『言葉』のパワー、いや想い、いや魂に圧倒された。著者の極限ギリギリに肉薄した『文学(言葉)』に対峙する魂が、文学には疎遠であった筈の私の内部に遠慮することなく強引に侵入してきた。「言葉が見る夢」を私が見たような不思議な気持ちに今包まれている。永岡杜人氏の次回作では、どのような夢を見させてくれるのだろうか!
法政、おお、わが母校
法政大学通信教育部日本文学科のスクリーングで私にSの評価をつけてくれたのが永岡杜人先生。懐かしさのあまり買って読んだら、何年も前のゼミのことが思い出されて涙。永岡先生は通教生に優しかった。その優しさがこの本の全編に流れている。リービ英雄、平野啓一郎、絲山秋子、多和田葉子、朝吹真理子、橋本治・・・、扱っている作家や作品を読み解く永岡先生の人間性、人格が滲み出ている評論ばかり。若くして亡くなった同僚の追悼文や、亡くなった大学時代の同級生が密かに書いていた小説についての評論も格調高い。法政大学万歳! 永岡先生が講義していた58年館は取り壊されてしまったらしいけど、あの大教室に漂っていた空気は忘れられない。奥付には、まだ、講師をしていると書いてある。法政大学に行って、永岡先生にサインしてもらおう! 永岡先生のブログ『言葉が見る夢』も最高! でもブログの写真の先生は、結構老けている。大教室の教壇に立っていた永岡先生は、ダンディーな渋いおじさんだった。私の憧れの人だった。大学院に進むことを永岡先生に勧められたけど、結局就職しちゃった私だけど、この本を読んで、もう一度文学をやり直そうと思った。法政、おお我が母校。永岡杜人万歳!