著者は児童精神科医として60年以上,子どもと親の心に向き合い続けてきた。その間,子どもをとりまく環境は大きく変わった。しかし,いつの時代も,子どもは症状を呈し,問題行動を起こすことで,その時代特有の課題に取り組んできた。一方,今日の精神医療の現場では,そうした子どもの訴えに十分に耳が傾けられず,薬物療法が偏重されている。精神科医療,とくに子どもの臨床の実践は,時代のあり方と密接に関連せざるをえないという認識のもと,著者は82歳で本格的クリニックとデイケア施設を開設した。そこでの体験から生まれた近年の発表論文を中心に,「虐待は予防可能か」など著作集未収録の12編を収める。
はじめに
第一部 虐待はなぜ繰り返されるのか
虐待は予防可能か
第一次予防としての母子デイケア
母乳を全く拒否して来た二歳一カ月女児
第二部 子どもたちは何を訴えているのか
内的規範が重視される現代的課題との取り組み
その時代性について
思春期に現れる乳児期来の諸問題
第三部 「精神療法はもう古い」のか
若い精神科医に告ぐ──今からでも遅くない、医療の原点に帰れ
思春期非行少年の精神療法
良識ある精神医療のために
第四部 患者の危機にどう応えるか
危機介入について
「叱る」について考える
「うそ」の精神分析
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