2023年、前代未聞のエル・ニーニョ現象(スーパーエル・ニーニョ現象とも称されている)により、パナマ運河渇水問題が浮き彫りとなった。パナマの公用語はスペイン語であり、同国については、我々日本人にはあまり馴染みのない国の一つであろう。それゆえ、パナマ運河というと、名前だけは知られていても、私たちにはあまり縁がないように思われるかもしれない。しかし、それはとんでもない間違いであり、私たちの生活物資・エネルギー資源・食糧資源の輸送においても重要な位置にあるといって過言ではない。
実際、わが国の穀物自給率は28%であり、飼料用トウモロコシ、コムギやダイズの他、牛肉等の畜産物は米国や南米諸国(本書ではブラジル・パラグアイ・アルゼンチンを取り上げる)等から輸入している。これら輸入農産物は、もちろん、パナマ運河のカリブ海側から太平洋側へと通過し、その後、わが国に到達するという構図である。
ところが、この運河渇水問題により、船舶の通行隻数が制限され、物資の円滑な輸送が困難な事態に陥った。このことは、単純に前記新大陸の国々から食糧または食料資源を輸入すればよいという問題では済まなくなった。つまり、パナマ運河渇水により、「輸入農産物が無事に到着できるのか?」という不安が生じることの他、「国内の穀物自給率を向上させるべきではないのか?」と考えたものであった。
そこで、『パナマ運河渇水問題から日本農業を考えるー新大陸企業型農牧業の長短ー』をB5カラー版として発行し、わが国の農業の在り方を考える材料になればいいのかな?というところである。本書では日本農業の方向性等については取り扱わないが、前記エル・ニーニョ現象の他、無計画な森林伐採による農牧業の拡大も環境破壊を引き起こしているとして、現状編(第1章〜第5章)・歴史偏(第6章〜第7章)・対策編(第8章)と3つに大別した形とした。最後の対策編としては、パナマ赴任時代に取り組んできた野外フィールドワーク成果を厳選抜粋し、関心ある方々への教育材料の一つとして取りまとめた。
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