日本の科学者2022年7月号 Vol.57(654号)
教養教育は大学教育において根幹的役割をなすべきものであるが,翻って大学の現状を見るならば,特定の「役立つ」研究分野に資源が集中する一方,全体しては貧困化が進み,政策や産業への従属性が強まっている.同時に大学運営においても,学長権限が強化され大学自治が弱体化した.その結果,大学はますます「役立つ人材」の養成機関と化しつつある.教養教育を基軸とする大学教育を開拓してゆくためにも,学問の自由と大学自治を擁護し,教職員の雇用・労働条件を守ることが必要なのである.
本特集では,はじめに藤田(社会教育)が,文科省,経産省の政策における教養教育の認識を紹介する.その後に,今日の社会,若者の発達状況に応じた創意ある5つの教養教育実践が,木戸(平和学),山口(化学),大倉(環境倫理学)・澤(環境哲学),竹内(環境科学),吉田(環境経済学)から報告される.(「現代を生きるための教養教育 長野八久」より抜粋)
《特集》
現代を生きるための教養教育
まえがき 長野八久 02
言葉の玉手箱 吉田 央 03
現代の大学における教養教育の意味
──生涯学習との関連において 藤田公仁子 04武力信仰に抗する教養教育 木戸衛一 10
科学的思考の形成を目指した実験教育
──基礎化学実験の実践から 山口和也 16
農学部・工学部における哲学・倫理学教育の意義
──専門教育との相互関係における人文系教養教育の試み 大倉 茂,澤 佳成 22
大学における環境教育 竹内 智 28
教養としての「社会の仕組み」認識の意義
──福島原発事故を題材として 吉田 央 36
【談話室】
「点の記」アナザーストーリー
─私の三角点ができるまで 大脇温子 42
【ひろば】
まちは劇場,
アートは誰もが享受できるもの 甲賀雅章 44
日本の科学技術発展阻害の例を秘密漏洩裁判に見る
─愛知製鋼による告訴事件で無罪判決 松田正久 48
【本】
的場信敬・平岡俊一・上園昌武 編著
『エネルギー自立と持続可能な地域づくり ─環境先進国オーストリアに学ぶ』 関 耕平 51
〈読者の声〉 52
〈科学者つうしん〉 53
〈編集後記〉(藤田公仁子) 56
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