【POD】「至福の最期」で旅立つための10か条ー人として、患者として、幸福に生きるために
余命宣告を起点にした幸福な人生論
技術士ならではの論理的で平易な「人生のガイドブック」
順調に人生を重ねてきた筆者は、52歳のときにがんと診断された。
57歳で東京大学の大学院に入り、がんの研究を始めた。
人生のシフトチェンジとは。幸せな人生の定義とは……。
経験と知見が結実した「人生のガイドブック」。
がんが判明し東大大学院へ
著者は、技術士として順調にキャリアを積んできた。
技術士は、特に難関と知られる国家資格だ。科学技術についての高度な知識などを備えた技術者に与えられる。
筆者は数多くの発展途上国で政府開発援助にかかわっていたが、イラク復興支援プロジェクトに従事していた52歳のとき、血液性のがんにかかっていたことが判明する。平均的な余命は10年と診断された。
筆者は一念発起し、57歳で東京大学医学部の大学院に入学し、ガンについて研究を始める。
余命を意識して生じる社会とのミスマッチ
「余命を意識すると、時間感覚が狭量になってしまいます。1年後とか2年後とかに意識が向いてしまい、前述した⻑いスパンで社会が⾒れなくなります。がんに罹らなくて健康でも余命はあるのですから、100年先の社会を想像して今を⽣きることが⾄福の最期のためには重要です」(本書から引用)
筆者ならではの指摘だ。
日々多忙な人たちは、近視眼的になりがちだ。長いスパンで物事を考えたり、将来に目標を据えたりすることは少ない。しかし、シニア層ほど残りの人生は、余命を意識しすぎないことが大切なのかもしれない。定年退職といった1つの区切りを迎えその後の人生を考えるとき、あるいは病にかかったとき、幸福に生きるにはどうすれば良いのかを考えるきっかけを与えてくれる。
シニア向けの幸福に生きるためのガイドブックとしてもおすすめ
50代は定年後の人生をどう生きるか、答え探しをする世代である。親の介護や子どもの巣立ちによって家族関係も変化する。毎年の健康診断が気になり、残りの人生をカウントしがちだ。
だが、筆者曰く「最期までの時間は忘れて一番やりたいことを選ぶ」「残り時間を計ろうとしなければ最期は遠ざかる」
本書は、各記述がロジックツリーのように構成され、理解しやすい。また、平易な表現でつづられ、親しみやすさも兼ね備えている。
文・蜂巣 稔
[著者プロフィール]
谷口友孝(たにぐち・ともたか)
1953年、東京生まれ。技術士、東京大学大学院元客員研究員。発展途上国での政府開発援助に従事して調査団長などを経験する。その40年間でイラク復興支援プロジェクトへ尽力していた52歳のときに抗がん剤さえ効かない進行がんと診断され、経過観察で生き延びる。その後、60歳定年を目前にがん治療への疑問から東京大学大学院へ学生として入学。在学後は客員研究員でがんの研究に携わり、古稀を迎える現在は執筆の傍ら学会の委員長、大学の支部長、町会の役員などをして過ごす。
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