天意には叶うが、人の掟に背く恋(『それから』より)
--前期三部作『三四郎』、『それから』、『門』のなかで、
漱石は「姦通罪」を批判しているーー
「姦通」のテーマでつながる三作品を詳しく分析、「姦通罪」を制定し、改悪した
国家権力と家父長的な社会制度への批判を読み解く。
前期三部作の前提
(1)三部作の構造──旧約聖書とズーデルマンの『消えぬ過去』
(2)姦通という主題、および『姦通罪」に対する従来の研究の誤解
(3)「姦通罪」の歴史、検閲
第一部 『三四郎』──姦通劇の開幕
三四郎が元『海軍の職工」の妻との姦通に失敗する話の政治性/三四郎、二人の人妻に似た美禰子を追う/自分の欲望を投影(projection)する三四郎/二十世紀のハムレット野々宮と、オフィーリア美禰子の『消えぬ過去」/野々宮の姦通願望、ダビデの話と美禰子/三四郎とよし子の『消えぬ過去」の形成/検閲への配慮、ほか
第二部 『それから』──「天意に叶ふ」恋の物語
『それから』と『三四郎』の登場人物の類似/代助の姦通願望と「男が女を斬つてゐる絵」の政治性/家父長的資本主義社会における結婚の機能と父の権威/ルソーの『社会契約論』の影響──国家と個人の自由/多面的な国家権力批判と自我の確立/三千代の「結婚という社会契約」にたいする挑戦/『それから』の評価の問題、ほか
第三部 『門』──誰も死なない姦通小説の誕生
姦通文学の歴史/『門』のテーマの提示──光と影と胎児的寝姿の意味/姦通という『消えぬ過去」/宗助への『愛の刑」その一 ──大学からの追放、父からの勘当/『愛の刑」その二──叔父に父の遺産を奪われる/精神的トラウマ(心的外傷後ストレス障害)/御米への『愛の刑」──子供の死/『愛の賚」と『トリスタン・イズー物語』、ほか
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