動物は何のために生きているのか。生物学では、それは自分の遺伝子を残すためであるということになっている。この目的を遂行するため、動物は多かれ少なかれ、ワンセットの行動レパートリーをもっている。移動し、探し、襲い、食う。また、逃げ、隠れ、だまし、ときには変身することもある。そして、交信し、つがい、すみかをつくり、さらには協力し合い、社会的絆をつくることもある。こうした行動は、彼らの生活圏の物理的環境、また餌や天敵などの生物的環境と深く関わっており、各レパートリーには驚くべき多様性がみられる。
本書『動物の生き残り術』では、13の行動レパートリーとしくみが紹介される。登場する動物はおもに節足動物である。彼らは、シンプルな体制をもちながらも地球上で最も繁栄を誇っており、行動の多様性においてはほかを凌駕している。彼らから得られる知識は、ヒトを含む高等動物の行動メカニズム解明に大いに参考となるし、また工学的応用へのヒントにもなりうる。
本書では、行動生物学・神経行動学のエッセンスを、現在活躍中の若手・中堅の方々に紹介いただいた。それぞれの分野は、研究の進展度によって、メカニズムの解明が行動レベルにとどまっているものもあれば、神経レベルに迫るものもある。しかし、いずれにおいても、話題は基礎から最新の知見にまで及んでいる。この本が刺激となって、読者の動物行動への興味がふくらみ、さらにそのしくみへの関心が高まるとしたら、執筆者一同、このうえない喜びである。
(序文より抜粋)
第1章 探索ーまずは探すことから・・・岡田二郎
第2章 攻撃ー1回の食事を得るにも一苦労・・・山脇兆史
第3章 逃避ー逃げるが勝ち・・・加納正道
第4章 擬死ーむだな抵抗はやめよう・・・西野浩史
第5章 交尾ー始まったらもう止められない・・・酒井正樹
第6章 摂食ーハングリーではいられない・・・朝岡 潔
第7章 寄生ー主が服を脱ぐとき・・・伊谷 行
第8章 清掃ーもしも,それをしなかったら…・・・熊代樹彦・酒井正樹
第9章 建築ー安らぎの我が家づくりも楽じゃない・・・中田兼介
第10章 変身ー生き残るためのモデルチェンジ・・・佐々木 謙
第11章 定位ー何をたよりにめざすのか・・・弘中満太郎
第12章 通信ー会話はボデイーランゲージで・・・藍 浩之
第13章 社会的絆ーおしゃべりはケミカルで・・・石田裕幸・尾崎まみこ
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