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ショートケーキは祈りのかたちーー。 悩んだり立ち止まったり、鬱屈を抱えたりする日常に、 ひとすじの光を見せてくれる甘いもの。 「ホール」 大学生の<ゆか>と<こいちゃん>はどちらも、母との二人家族。父が出て行ってから買えなくなったホールケーキを求めて、ふたりは<失われたホールケーキの会>を結成。ある時、離れて暮らす父親から、「大事な話がある」とそれぞれに連絡があり……。 「ショートケーキ。」 俺が働くケーキ屋では、ホールケーキを予約なしに買ってくれるお客さんを天使と呼ぶ。天使の中には常連もいて、その二人組女子は、丸いホールのケーキにこだわっているようなのだ。ところで甘いものに目がない姉が、最近元気がないのが気になっているが……。 「追いイチゴ」 ケーキ屋で働く私には、嬉しいことがあったときにひとりで行う「趣味」がある。ケーキを冒涜しているようで人には言えないのだが……。 「ままならない」 ママになった瞬間から、さまざまなことがままならなくなった。大好きなショートケーキをもう一度ひとりでゆっくりと味わいたい。その願望を実現すべく、<あつこ>は二人のママ友と互助会を結成する……。 「騎士と狩人」 <央介>の口癖は「嫁に行きてえ」、何事にも受け身で生きてきた28歳の会社員だ。ある時、領収書の不備を指摘されたのをきっかけに、会社の経理担当の女性のことが気になり始めるが……。 ショートケーキをめぐる、優しく温かな5編の物語。 文庫解説:岡野大嗣(歌人)
レビュー(89件)
誰もが一度は食べてことのあるショートケーキ。あまりに美味しそうでかわいい表紙に一目惚れし購入しました。坂木さんの和菓子のアンちゃんシリーズが大好きで何度も読んでいますがこちらも優しい気持ちになれるものでした。
5つの短編集からなる小説です。 坂木司さんの小説は何処にでも居る普通の人が主人公になる話しが多いので共感出来る所が沢山あります。 それに嫌な人が全くと言って良いほど出て来ないので(実際問題、こんなに平和な人間ばかりじゃないぞとは思いますが)読んでいて優しい気持ちになります。 癒しを求めている方は読んでみた方が良いと思います。 ページ数も少ないので読みやすいと思います。
好きな作家さんの久しぶりの新刊文庫。楽しめました。
坂木司の短編集。ある話では脇役だった登場人物が別の話の主人公になるという坂木司お得意の手法が取られています。和菓子のアンシリーズは回を追うごとにお菓子に関する蘊蓄がうるさく感じるようになっていたのですがこちらは楽しく読めました。薄い文庫本なのでサクサク読めます。