「顔色をうかがう」「顔に出る」「顔を突き合わせる」--顔は身体の一部であるとともに、「他者と共に在る」ことを可能にしている器官でもある。顔の不在を物語る村上春樹や多和田葉子の作品から、他者と向き合う困難と可能性を描き出す文学批評。
序章 顔をなくした者たちの物語
1 共在の器官としての顔
2 顔を見つめる動物
3 顔を失うということ
4 顔が現れないということ
5 顔をなくした者たちの物語を読む
第1章 顔の剥奪ーー探偵小説と死者の表象
1 手がかりの束としての死者=死体
2 顔への悪意
3 死者の身元をすりかえる
4 表象の闘争
5 他者の表象としての死者
6 二重の暴力とそのアレゴリー
第2章 剥離する顔ーー村上春樹『国境の南、太陽の西』における「砂漠の生」の相貌
1 空虚な「顔」
2 取り返しがつかないことーー時間とその不可逆性をめぐる物語
3 砂漠の生ーーはかなさと酷薄さ
4 このあまりにも偶発的な生
5 運命の恋、あるいは物語の起源
6 「私は悪をなしうる存在である」
7 人と人のあいだに現れる顔
8 剥離する顔
第3章 異邦の顔ーー多和田葉子「ペルソナ」における他者の現れ(なさ)
1 顔ーー見えざるものの現出としての
2 顔の現れ(なさ)をめぐる物語
3 「入植者」たち、あるいは「ゲットーの住人」
4 コロニアルな欲望とレイシアルな想像力
5 面を被る、ということ
6 顔をなくしたまま歩行を続ける
第4章 引き裂かれた顔の記憶ーー林京子「道」における死者の現れ
1 死者に出会うということ/死を書くということ
2 最期の姿を求めてーー「道」(一九七六年)
3 証言の分裂ーー企ての破綻
4 記憶から記憶へーー「道」での語りの重層と移行
5 顔を奪われた死者たち
6 引き裂かれた顔の記憶
7 事実を知るということ/死者の顔に出会うということ
第5章 顔の回復ーー他者の現れを待ち続ける探偵としてのメグレ
1 『メグレと首無し死体』
2 定型からの逸脱
3 「法医学」のまなざし 対 「ハビトゥス」の解読
4 表情がない女
5 「顔」の現れ
6 越境する人間
7 「顔」の回復=物語の回復
おわりにーー脆弱な顔をさらしながら
あとがき
レビュー(0件)