なぜ人を傷つけてはいけないのかがわからない少年。
自傷行為がやめられない少年。
いつも流し台の狭い縁に“止まっている"おじさん。
50年以上入院しているおじさん。
「うるさいから」と薬を投与されて眠る青年。
泥のようなコーヒー。
監視される中で浴びるシャワー。
葛藤する看護師。
向き合ってくれた主治医。
「あなたはありのままでいいんですよ」と語ってきた牧師が
ありのまま生きられない人たちと過ごした閉鎖病棟での2ヶ月。
これまで牧師としてスーツを着て見舞いに行っていた病院へ、わたしは患者として入院しに行く。その病棟は、自分では自由に開閉することのできない分厚い扉で仕切られている。 (序章より)
序章 肩章を剥ぎ取られる
事件の顛末
第一章 牧師が患者になる
ショックの連続
トイレの掟
ヨガ行者のおじさん
etc…
第二章 少年たち
競い合う少年たち
1頁読むのに10分かかる
おねしょ
第三章 十字架
彫り物のおじさん
泥コーヒー
元少年A
看護師の十字架
etc…
第四章 診断
知能検査
認知行動療法
「ありのままのわたし」でいいのか <? br> 医師を操ろうとする
SNS依存
etc…
第五章 過去
自分の顔
震災
脱走
伝道者
一切口を聞いてくれない青年
etc…
終章 こだわるのでもなく、卑下するのでもなく
珍しい患者
主治医の家に行く
介入するのがよいか、見守るのがよいか
etc…
レビュー(14件)
一気に読んでしまいました。心を病む人のリアルがひしひしと伝わってきます。また、同時に読みやすく、引き込まれてしまうのは、著者の悲しみや怒りや、時に重くキツイ内容をも淡々と伝える文章の裏に、自分を含む当事者への愛があるのだと思います。
心にじん…と沁みるものを残す本
筆者の精神病棟入院前後の経験を経て、見て聞いて思い感じてきたことが浅くなく深淵に込み入りすぎずに、読みやすく丁寧に描かれてあった。多くのキリスト者の本にある信仰を前提とした励ましの内容でなく、むしろ筆者という第一人称の目線にこだわった回想録である。全ての話題が予め計算されたように繋がっているわけではないし、自分ではどうにもならないことも含めて描かれている様は人生という物語のリアルさを感じさせ、穏やかな文体で統一されながらも各章ごとの色が感じられるのは人生が一言では語れない様子を表しているようで新鮮だった。 精神病棟での生活や筆者の治療の過程など内容面でも心打たれるものがいくつもあるが、そこはぜひ本書を手に取り読んでいただきたいので割愛する。 自分も自己や社会、人生に対して思いを馳せがちな人間であるが、この筆者ほど上手く捉えることは出来ないにせよ、与えられた命の続く限り自分の人生を慈しみ味わっていこうと思わせられる一冊だだった。