ここには名のある英雄英傑は登場しない。みな無名の生を生きた人々である。だが、かれらは自らの人生を生きた。はたの目にそれがどのように映るかはかれらの眼中になかった。かれらはただ自分の人生をひた向きに生きた。だが、それは目に見えないなにかを踏み越えることでもあった。そしてそれぞれの作品の作家たちもまたそうであった。
主人公たち、作者たち、かれらがなにを、どのように、「踏み越えた」か。それを、複数の人々と語り合った本書の対話編のなかから、どうか読者にもじっくりと読み取っていただきたい。
まえがき
第一章 いまだ出ぬ月の光を━━芥川龍之介作『奉教人の死』
第二章 いよよ華やぐいのちなりけり━━岡本かの子作『老妓抄』
第三章 なぜ斬ったか━━山本周五郎作『大炊介始末』
第四章 わが身の阿呆がをかしうて━━宇野千代作『おはん』
第五章 未完の情熱に生きる━━松本清張作『或る「小倉日記」伝』
あとがき
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