【POD】POD版 青年期キャリア発達における経験学習と意味づけに関する研究
本書は、平成23年度(2011年度)の立正大学大学院心理学研究科博士後期課程博士学位論文を書籍化したものである。他者による研究上の閲覧や引用を可能とするためにPOD版で出版することとした。 本書は、「序章」、「第1部 文献研究〔第1章〜第3章〕」、「第2部 調査研究1(量的研究) 〔第4章〜第6章〕」、「第3部 調査研究2(質的研究および実践研究) 〔第7章〜第8章〕」、「第4部総合考察〔第9章〕」から構成される。 序章では、1990年代初頭のバブル経済崩壊後から端を発したと考えられる社会変化と若年者のキャリア発達の諸問題を捉えた。新たな日本的キャリア観に基づく若年期のキャリア発達理論を追求すべく、次の3つのリサーチ・クエスチョンを立てた。(1) 現代日本の若者は、キャリア発達上どのような心理的問題を抱えているか。(心理的問題)(2) 現代日本において到達すべき青年期のキャリア発達とは、どのような状態か。(発達のゴール)(3) 現代日本における青年期のキャリア発達は、どのようなプロセスをたどるのか。(発達プロセス) 第1部では、先行研究・調査を紐解きながら、現代日本における青年期キャリアの問題とあるべきゴールおよびプロセスを明らかにし、青年期キャリアの仮説モデルを設定した。 第2部では、その仮説モデルに基づいて、青年期キャリア発達のゴールとその発達プロセスについて、量的研究によって検証し、職業的一人前の達成度と経験学習、意味づけ、キャリア意識、職業的アイデンティティの関連を表す因果モデルを構築した。 第3部では、質的研究および実践研究M-GTA (Modified Grounded Theory Approach)によって第2部で構築した因果モデルの具体化と更なる検証を行った。 第4部では、以上の結果から、現代日本の青年期キャリアのゴールと発達プロセスについて、得られた発見的事実や理論的貢献について整理し、新たな日本的キャリア発達モデルと、若者のキャリア支援のあり方について提言した。 本書の主な成果は、1日本社会が求める若者のキャリア発達として「職業的一人前」という概念が想定され、またその測定尺度を開発されたこと、2そのプロセスは段階的発達ではなく経験学習のサイクリックな発達を基盤として職業的自己概念が形成される「経験学習的キャリア発達モデル」で説明ができること、3その発達過程において労働上の困難を克服する技能習得がなされるだけでなく、困難に対する意味づけがなされることが重要であること、4また、「やりたいこと志向」には「排他的」と「受容的」の2つの志向性があり、キャリア発達では受容的なやりたいこと志向(自分のやりたいことだけでなく周囲からの期待なども受け入れる志向性)の向上が重要であることであった。 これらの成果を総括すると、日本的な「一人前」という概念と西洋的なキャリア理論を融合して、「職業的一人前理論」という新たな日本的キャリア理論を構築できたといえる。
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